さよなら採用ビジネス 第89回「自覚がないのは誰?」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第88回『狙うべきターゲットを見極めよう』

 第89回「自覚がないのは誰?」 


安田

大幸薬品さんの採用手法が話題になってますね。「あえて弱みを見せる」みたいな。

石塚

ああ、はいはい。今更って感じですけど。

安田

どんな内容なんですか?

石塚

大幸薬品って今までは「いいイメージを見せる」という、お決まりの求人方法だったんですよ。

安田

大幸薬品ってラッパのマーク正露丸ですよね?

石塚

はい。名門企業です。

安田

そこがあえて弱みを晒しての採用をすると。

石塚

「うちは今こんな課題を抱えてます。こんな危機感を持っています」って出すことで、採用の本気度を知ってもらおうみたいな。

安田

なるほど。「それが新しい」という記事だったわけですね。日経的には。

石塚

そうです。ぜんぜん新しくないですけどね。

安田

いきなり! ステーキの「社長のお願い」と同じような感じですか?“弱みを見せて共感を得る”みたいな。

石塚

うーん。「いきなり」の場合はそもそも会社の評判が悪いから。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。非常に。

安田

それはなぜ?

石塚

まず業者を叩かないと利幅が出ないモデルだから。

安田

業者間の評判が良くないってことですか?

石塚

「ペッパーフードサービスと付き合って誇りに思う」なんて業者さん、たぶんいないと思う。

安田

でも「コストダウンを要求する」って普通のことじゃないですか。

石塚

行儀が悪いんですよ。

安田

行儀が悪い?

石塚

仕切り値を途中で変えたりとか。

安田

へえ。

石塚

映像・画像なんかを納品しても「OKです」となってたものが「会長が気に入らないんで」って、何度も修正させたり。

安田

なるほど。ワンマン会社にありがちな話ですね。

石塚

おっしゃるとおり。

安田

大幸薬品は、それとはちょっと違うと。

石塚

大幸薬品はさすがにそんな行儀の悪いことはしない。

安田

ちなみに「弱みを見せる」戦略は、うまくいく可能性ありますか?

石塚

本音採用っていうんですけど、もう昔からやってる手法ですね。

安田

大幸薬品ほどの大手でも?

石塚

大手はプライドもあるので、あまりそういう手法はやってこなかった。

安田

「そこまで困ってる」ってことですか?採用に。

石塚

そうだと思います。

安田

だけど大手以外は昔からやってる手法なんですよね。

石塚

はい。ずっと前からやってます。

安田

素直に言えばいいだけだと思いますけど。「いかにあなたを必要としてるか」って。

石塚

安田さんは採用業界にいたからそう思うんですよ。普通の経営者はそんなこと考えもしません。

安田

私が採用やってた頃って「上から目線の採用」が当たり前でした。

石塚

今でも大して変わりませんよ。

安田

へえ。で、採用が大変になってきたから、しぶしぶ気を遣うようになって来たと。

石塚

それでもまだ意識は低いですけど。

安田

そうですか。

石塚

はい。人が集まらない時点で事業モデルに欠陥があるんですけど。そこを自覚してる経営者はごく少数派。

安田

いまだに?

石塚

5パーセント未満ですよ。そんな経営者。

安田

「人が集まるモデルに変えよう」みたいな発想はないんですか?

石塚

まったくないです。

安田

やっぱ根底に「こっちが給料を払ってる」ってのがあるから。

石塚

余裕のある会社ほど人に鈍い傾向があります。「金で解決できるわ」って。あと、経営者の感覚が旧いケース。これは年齢問いません。

安田

若くても感覚の旧い経営者がいるってことですか?

石塚

います、います。若いのに「金払えばついてくる」と思ってる経営者。

安田

へえ。

石塚

あとは「ウチはビジネスモデルが秀逸だから」とか。非常に主観的。頭が旧い。

安田

レベルを問わないのであれば採用はできるでしょうけど。「どこに行っても採用されない」って人もいるので。

石塚

それは採用とは言わない。

安田

ですよね。お願いしてでも来て欲しい人を採らないと。

石塚

そこが繋がってないんですよ。

安田

なぜ繋がらないんですかね。簡単な算数ですけど。

石塚

ヒト・モノ・カネという経営3資源で「ヒト」っていちばん分かりにくいから。

安田

中小企業の社長に「どれが一番大事ですか?」って聞いたら、99%「ヒト」って答えますよ。

石塚

そうなんですよね。でもあれは模範解答であって本音は違う。

安田

本音は違いますか。

石塚

もう完全にダブルスタンダードですよ。

安田

へぇ。

石塚

「採用のやり方がわからない」って素直に言える経営者は、まだ救いがある。

安田

謙虚さがあると。

石塚

はい。その感覚がないところに、いくら採用のノウハウを伝えてもどうしようもない。

安田

そういう場合はどうするんですか?

石塚

お断りします。

安田

でも経営者にそういう感覚があるかどうかって、見抜けます?

石塚

はい。まず「代わりはいくらでもいるから」って言っちゃう人はダメですね。

安田

いますね。「辞めたらまた採りゃあいいんだ」って社長。

石塚

はい。次が「自分が言ったことを忘れる人」。コロコロ方針が変わって、それをぜんぶ社員のせいにする。

安田

それもまた最悪ですね。

石塚

あと、「朝からいつも不機嫌で、すぐ怒号が飛ぶ人」もダメ。みんな地雷を踏まないようにピリピリてる。

安田

目に浮かびますね。

石塚

まあ、いろいろあるんですけど、一言でいえば「自分の身内を絶対に入れたくない会社」ですね。

安田

そういう社長でも採用の相談はして来るんですか?

石塚

はい。「どういうわけか、採れなくて困ってるんだ」って。

安田

自分が原因で「採用力が落ちてる」って自覚はない?

石塚

まったくありません。

個人で出来る、採用支援。
\ 石塚本人がスキルを伝える /
石塚求人大学開講 受講生募集中
詳しくはClick

石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

感想・著者への質問はこちらから