さよなら採用ビジネス 第94回「社長の黄昏時」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第93回『プロファイリングの手法』

 第94回「社長の黄昏時」 


安田

最近「もう経営に疲れた」っていう社長さんに会う機会が多くて。

石塚

ホント増えてますよね。

安田

社長ってそれなりに稼げるしやりがいもあったけど、まあ大変みたいですよ。今は。

石塚

働く人の価値観がガラッと変わりましたから。

安田

そうなんですよ。組織運営がホントしんどいみたいで。「会社を売って個人で仕事したい」って相談が増えてます。

石塚

分かります。

安田

実際に「辞めて1人でやる」というところまで、決断してる人は少ないですけど。

石塚

潜在的に「経営を降りたい」って人は多いですよ。

安田

そうですよね。かなり多くの経営者さんが人の問題で疲れてる。

石塚

はい。ただ、どうしたらいいのか、答えがまだ見つからない感じですね。

安田

出口としてはやっぱりM&Aじゃないですか。

石塚

うーん、ちょっと厳しい気がする。M&Aだけを出口にするのは。

安田

会社を売却して、残りの人生ずっと食べていけるぐらいお金が入ればいいんですけど。

石塚

まあそんなに高くは売れないし。債務もあるし。

安田

下手したら借金が残りますもんね。じゃあ、そもそも「抜けたくても抜けれない」って感じですか?

石塚

それが現実でしょうね。

安田

本当は、辞められるものなら辞めたいと。

石塚

そういう経営者はすごく多いと思います。

安田

やっぱり人に疲れてるんですか?

石塚

僕が見てて思うのは、まず「飽きちゃった」と。

安田

ああ、確かに。そういう経営者さんもいますね。

石塚

多いですよ。

安田

石塚説では20年が経営者をやる限界でしたよね?

石塚

最近、それが早くなってる感じです。

安田

20年もたないですか。

石塚

今ってすごく変化が激しいでしょ。

安田

はい。1年後はもう見えないですよね。

石塚

だから消耗が激しい。

安田

なるほど。

石塚

いまって地雷ばっかりじゃないですか。

安田

地雷ですか?

石塚

何かあれば叩かれるし。昔は経営って、けっこう恍惚感に浸る瞬間が多かったと思う。

安田

まあ、会社にいれば王様でしたから。

石塚

優秀な新卒が目を輝かせて「安田さん!」なんて寄ってきて。

安田

そういう時代もありました(笑)

石塚

今はみんな、ネット情報見ながら「どうやったら脅かせるか」って考えてる。

安田

それはちょっと極端ですけど(笑)まあ労働法には詳しいですよね。

石塚

いやいや、極端なことを言えば脅しですよ。すぐ辞めるって言い出すし。

安田

まあそうですね。

石塚

恍惚感に浸るより、しんどい時間のほうがはるかに多い。

安田

私自身はもう組織を持ってないので、リアルなしんどさは分からないです。ただ、いろんな社長の話を聞いてると、しんどいんだろうなって感じる。

石塚

僕はもう二度と人を抱えようとは思わないですね。

安田

でもFacebookを見てると「やりがいナンバーワン企業に選ばれました」とか「新入社員が入ってきてくれて、今年もいい人がそろってます」みたいな投稿が多い。

石塚

まあ宣伝じゃないですか。「ノミネートされました」「表彰されました」っていう。

安田

それは人を採るための宣伝ってことですか?

石塚

そうでしょうね。みんな人材不足で困ってるので。

安田

すごいギャップを感じるんですけど。リアルに会ったときのしんどさと。

石塚

しんどくても採用はやらなくちゃいけないですから。

安田

でもFacebookって身内ばっかりじゃないですか。採用につながるとも思えないですけど。

石塚

それはね、やっぱり褒めてほしいんですよ。

安田

「いい会社だ」って言われたいと?

石塚

「安田社長はすごいですね」って言われたい。

安田

じゃあ実際は言ってるほどキラキラしてない?

石塚

まあ、それは会社によるでしょうね。実際にいい会社もあるんですよ。

安田

悩める社長さんって、やっぱり「人」で悩んでるんですか?それとも「お金」ですか?

石塚

お金で悩んでる社長は事業モデルの構築が下手なんだと思う。あとは人の問題。

安田

人の問題はやる気を奪いますよね。経営者の。

石塚

コンプラうるさいし、労務コストかかるし、「あれもだめ、これもだめ」で働かせることもできないし。「うまみがない」って言ったほうがいいんじゃないですか。

安田

確かに。経営をやるうまみは激減しましたね。

石塚

たとえば「コロナで休業です」って言ったら、サラリーマン感覚だったら「よっしゃ!休み」とか思いますよ。

安田

思いますね。

石塚

でも経営者はそういうわけにいかない。

安田

休んでる社員にも給料を払い続けないといけないし。

石塚

それでいて社員には文句言われるし。もう「バカらしい」ってなりますよ。

安田

社員が辞めるより先に、社長のほうが嫌になって辞めちゃうかもしれない(笑)

石塚

「先においとまさせていただきます」みたいな。

安田

社員はビックリするでしょうね。

石塚

でもそれ、あり得るでしょう。

安田

大いにあり得ますよ。

石塚

じつは社長の「うつ率」ってすごく高いんです。

安田

そうなんですか。

石塚

多いですよ。けど絶対に自分から「参った」って言えない。とにかくファイティングポーズを取り続ける。

安田

責任感でしょうね。

石塚

我慢してる間にどんどん傷ついて。最後は猛スピードで壁に激突しそうになって「誰か止めてくれー!」って。

安田

まあ、そんなこと続けてたら壊れちゃいますよ。社長だって人間ですから。

石塚

でもギリギリまで頑張っちゃうんです。いろんな方法でストレス発散しながら。

安田

たとえばどんな?

石塚

多いのはハードな運動をガンガンやるようになる人。トライアスロンに熱を入れる社長とか。

安田

へぇ。

石塚

「サハラマラソンに出ます」とか聞いたら「ああ、経営に飽きてるんですね」って、思っちゃう。

安田

なぜハードな運動に行っちゃうんでしょう?

石塚

まずトレーニングは1人でできるから。そして努力の成果が数字に現れるから。何か確かなものに向かっていたいんですよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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