第50回 「受付スタッフが、コロナが怖いと出勤を嫌がります」
お医者さん
はあ……いつまでコロナ問題は続くのだろう。患者さんも明らかに減ってきたし、最近はスタッフも「コロナが怖いから出勤したくない」と漏らしているらしい。
お医者さん
中にはリモートワークのできる仕事への転職を考えている人もいるとか…。確かに、医師や看護師は病院で働くしかないが、彼女たちは必ずしもそうじゃないからなあ。
お医者さん
とはいえ、本当に辞められでもしたら困ってしまう。なんとかならないものか。
コロナに対する考え方もそれぞれですしね。
絹川
お医者さん
そうなんだよ。平気な人は平気なんだ。でも、気にする人はとことん気にするからね。ああ、もう、また求人を出さないといけなくなるな。って、あなた確か、ドクターなんとかの……
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
先生が困っているらしいと聞いて、やって来ました。
絹川
お医者さん
ああ、そうなのか。まあ、いま聞いたとおりだよ。受付スタッフの中に何人かが、コロナを理由に出勤を嫌がり始めてる。そして私には、彼女たちを安心させることができない。辞めていくのを黙って見ていることしかできないだろう、って話だ。
先生が今まで通りの働き方を望むなら、確かに引き止めるのは難しいでしょうね。
絹川
お医者さん
ん? なんだか含みのある言い方だね。どういうこと?
働き方をアレンジしてあげれば、お互いに納得できる落とし所があるかもしれませんよ、ということです。
絹川
お医者さん
んん? 働き方を、アレンジする? それは具体的にどういうことだね。
たとえば今回の場合、受付スタッフさんが辞めてしまう理由はなんでしょう。
絹川
お医者さん
だから、コロナだよ。出勤して多くの患者さんと対面でやり取りする中で、自分が感染してしまうんじゃないかという恐怖さ。
そうですよね。今の話のポイントは、「対面で」というところですよね。逆に言えば、「対面でない」なら問題はないってことです。
絹川
お医者さん
ああ、つまりあれだろ? リモート診察とかそういう話をしたいんだろ? 患者さんが病院に来なければ、受付スタッフも安心だろって?
まあ、そちらの方向の提案をすることも可能ですが、今回むしろ逆です。「受付スタッフさんが病院に来なければいい」のでは? ということなんです。
絹川
お医者さん
いや何を言ってるんだ君は。患者さんは病院に来る、でも受付スタッフは病院にいない。それじゃ仕事にならんじゃないか。
それがなるんですよ。先生は「遠隔接客」というシステムをご存知ですか?
絹川
お医者さん
遠隔接客?
ええ、文字通り、対面ではなく遠隔で接客するシステムです。受付にディスプレイを置いて、それ越しに患者さんと受付スタッフがやり取りをするんです。
絹川
お医者さん
いや……でも、そんなので本当に大丈夫なのか?
今は便利なサービスがいろいろと登場していますし、実際に導入されている事例も増えていますよ。それこそコロナなど感染の危険が高い診察の場合、医師は別の部屋にいて、ディスプレイで会話する、ということも行われていますし。
絹川
お医者さん
そうなのか。……確かにそれが実現できるなら、うちの受付スタッフも辞めずにいてくれそうだ。
さらに言えば、他の受付スタッフさんにとっても大きなメリットになると思います。子供さんが熱を出したとか、そういうときには出勤せず在宅で勤務する、という選択肢が増えるわけですから。
絹川
お医者さん
なるほど……確かにそうかもしれない。
それに、「在宅勤務可能な病院の受付スタッフ」と求人を出せば、きっと今までより多くの応募があると思いますよ。先進的な試みをしている病院として、話題になるかもしれない。そうしたら新規の患者さんも増えてくるかもしれません。
絹川
お医者さん
そう聞くと、確かに検討しないのは損な気がしてくるな。
そうです。検討するのはタダなんです。でも多くの方が「今まで通りのやり方を変えたくない!」と思うあまり、新しいやり方を拒絶してしまう。それはもったいないですよ、中にはきっと先生の病院にフィットするものがありますよ、というのが私の言いたいことなんです。
絹川
お医者さん
確かに、私にもそういうところがあったかもしれないな。よし、ちょっと前向きに検討したいから、詳しい話を聞かせてくれる?
もちろんです!
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。