第63回 経営者の変化

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

【好きなことで生きる】

10年ほど前、
売れないバンドマンと話をする機会がありました。
売れないといっても、
事務所に所属していて、
(当時)CDもお店で売られていました。

稼ぎはと聞くと、
アルバイトをしないと生活できないそうで、
ライブ活動しながら、
アルバイトにも精を出しているとのこと。

ライブのチケットを販売することも結構大変で、
バンドマン同士でチケットを
売ったり買ったりしているのだそうです。

音楽活動とは無縁の世界で生きてきた私にとっては、
好きなことしながら、生きていけるというのは、
とても新鮮でした。

【互助会から経済圏へ】

(売れない)バンドマンの世界では、
アルバイトやライブ活動で、新規の資金を得ながら、
お互いのバンド活動を支え合っています。
ある意味、互助会的な関係が成り立っていて、
ちいさな経済圏といえるものがそこにはあります。

そもそも、
商売のはじめは、
互助会のようなもので始まります。

商店街の個人店舗であれば、
お店同士で購入しあったりして、互いに助け合います。
そして、
商品やお店を紹介しあったりしながら、
商店街自体の経済圏を広げ、
お店を運営していきます。
さらに、
経済圏として栄えれば、お店も大きくなり、
収入も増えるという構造でした。

バンドマンの互助会は機能していますが、
経済圏が大きくならないので、
いつまでたっても、売れないままでした。


【意欲の行方】

昔の経営者は、どうやったら儲かるか、
どのようにしたら成長できるかということが
話題の中心にありました。
つまり、経済圏の拡大に興味があったのです。

今の私と経営者の会話は、
自分らしさをどの様に表現するのか、
どのようにそれを楽しむのか、
という方に関心がある気がします。

それが、私には
「バンドマンのような、互助会をつくりたい」
というように聞こえます。
今の経営者は経済圏の拡大よりも、
互助会に関心が移っていそうです。

年齢を重ねて、経営者の野望が薄れたのか、
資金がジャブジャブで、資産拡大に興味が薄れたのか、
現場から離れて、仕事の実感がほしいのか、
社会が成熟して、経済圏が拡大しないと諦めたのか。
いずれにせよ
経営者の思考は変わってきているようです。

この話の出口はありません。
なんとなく、変化を感じているということです。

 

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- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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