育てる人材・育てない人材

まず人を雇う。
雇った人を育てる。
育った人に仕事をしてもらう。
長らくこの順番に間違いはなかった。

質の良い人材をきちんと教育すれば、
そつなく事業を運営する組織ができあがる。
組織がある程度の質とスピードを維持していれば、
事業は利益を生み出し続けてくれた。

だがその時代はもう終わりつつある。
そつなく、ミスなく、
やり続けるだけでは利益が出ない。
なぜなら世界規模の価格競争が
始まってしまったからである。

仕方がないので安全基準を下げ、
約束した工程を省き、原価を抑えて
目の前の利益確保に走る。

その結果、多くの日本企業は
品質というブランドまで失ってしまった。
もはや日本製品を選ぶ理由がない。
すべては時代に合わない組織が原因なのである。

言われたことを言われた通りにこなす人材。
確かに企業にはそういう人材も必要である。
だがそれだけでは利益が出ない。

新たな価値を生み出し、新たな商品をつくり出し、
新たな顧客を創造する人材が不可欠なのだ。
だが残念ながらそのような人材は
自前で育てることができない。

育つとしたら自力である。
そして自力のある人材は自社だけには
とどまってくれない。
これはもはや止められない流れなのだと覚悟するべきだ。

ではどうすればいいのか。
やるべきことはシンプルである。
順番を変えるのだ。
雇った人材を育てるのではなく、
育った人材に仕事を発注する。

新たな事業を考え、新たな価値を生み出し、
新たなマーケットを創造する仕事を、
そのスペシャリストに外注するのだ。

スペシャリストはナマモノだ。
その時、その時、その場、その場で、
必要なスキルは変化する。

今、この瞬間、この事業、この会社で、
必要な能力を持った人材に、
期間限定で仕事を発注する。

もちろんそのコストはべらぼうに高い。
だが彼らが生み出す価値を考えればとても安い。
価値を生み出した後に雇い続ける必要もない。

事業を生み出す人材は雇わない、
育てない、管理しない。これが鉄則だ。
では生み出された新たな事業は誰が運営するのか。

それはもちろん自前の社員である。
雇って育てるべきはこの部分の人材である。
すなわち言われたことをきちんとこなす人材。

ただし、この人材の報酬は
どこかで頭打ちにしなくてはならない。
おそらく20代後半から30代なかば。

ここで昇給をストップする。
こなす人材を昇給し続けると、
事業は必ずどこかで赤字化する。

 

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