大手ビジネスマン39歳の
小さなビジネス開業スクール 体験記 ~3日目「好き嫌い・得意不得意を把握する」~


前回(体験記2日目)、自分が避けてきたものを深掘りし、言語化することで、自分だけの地図をつくった。その地図を手に、今回のテーマ『好き嫌い・得意不得意を把握する』を通じて、好きと得意を一致させていく。


「好きなことはなんですか?」

そう聞かれたとき、なんて答えるだろう。野球、ドライブ、ケーキ作り、ゲーム。きっと思い浮かべるものは、どれも現時点で存在するものだ。無いものは答えられない。これまでの経験の中で好きだと感じたものから選ぶ。ただ、その好きなことを仕事にするには大変な苦労が伴う。既に世の中にあるものの中から選ぶことになり、競争になるからだ。お金を稼ぎ続けるには、競争に勝ち続けなければならない。これが「好きなことをやって楽にお金が稼げるほど、世の中は甘くない」なんて言われる理由だろう。

でも、まだ世の中にない好きなことだったらどうだろうか。まだ誰も知らない、自分だけの好きなこと。まだ世の中にないのだから競争にはならない。自分だけの好きなことをつくってしまえば、好きなことを仕事にできるのだ。ではどうやって、自分だけの新しい好きなことをつくるのか。それは、自分の得意の中にヒントがある。

得意を深く掘る

BFS3日目のテーマは、〈好き嫌い・得意不得意を把握する〉。この3日目と、次回の4日目〈自分の役割を定める「私は何屋さんなのか?」〉で好きと得意を一致させて、自分だけの役割を決めていく。今回は、好きと得意を一致させるためのベース作りが主な目的だ。

事前に宿題として好き嫌い、得意不得意を書き出しておく。当日はまずそれらを共有してから、安田さんや他の受講生からの質問により、自分でも気づいていない得意なことを掘り起こしていく。最後に、自分だけの最も特徴的な得意に絞るために、安田さんが最も気になる得意を挙げていただく。

例えば僕の場合、得意なことは「わかりやすくすること」である。報告用に作った資料、自分で開いている勉強会、技術ノウハウを記した文書、これらをわかりやすいと言ってもらえることが多い。それはなぜかと考えてみると、人の話を聞くときや、説明を受けるときなどに「どうしたらもっとわかりやすくなるのか」という視点を常にもちながら聞く思考のクセがあるのだ。これが僕の「最も特徴的な得意なこと」だと、安田さんに力強く言ってもらえた。

得意とは個性のこと

得意とは、人との関係の中で生まれるものだ。もしも自分が世界にひとりだけなら、自分の得意なことはわからないだろう。他者と関わるから得意なことがわかる。だから得意を考えるときは、人との関係に注目する必要がある。なぜだか人よりうまくできること。自分ではその気がなくても感心されること。苦もなくやったことで喜んでもらえること。あるいは、思考のクセや、ついついやってしまうものでもいい。つまり得意とは、個性のことなのだ。誰もが持っているものだが、自然にできてしまう得意なことほど自分では気づきにくい。だから安田さんの得意を見抜く視点がありがたい。

例えば、BFSの他の受講生は以下の特徴的な得意(個性)が掘り起こされた。
・新しい提案を、はじめに実行に移すこと
・自分が無防備だから、相手が勝手に自己開示をしてくれること
・相手の感情を引き出すこと
・どんな物事も丁寧に扱うこと

得意を好きに近づける

ではどうやって好きと得意を一致させるのか? 安田さんが講義の中で語ったのは、「得意なことを、好きなことに近づけていく」ということ。好きなことを得意にするのではなく、得意を好きに近づけることがポイントだ。

好きなことを起点にすると、世の中に既にあるものを基準に考えてしまう。すると、冒頭で述べたように、競争に巻き込まれてしまう。だから、得意なこと(個性)を起点にする。自分が得意なことを好きになれるように、得意の中にある、嫌いなことや苦になることを取り除いていくのだ。

僕の場合、「わかりやすくする」のが得意であるが、なんでもわかりやすくしたいわけではない。前回書いたように、僕は論理的でない物事が嫌いである。だから、物事を深掘りした過程を論理的に伝える「わかりやすさ(縦方向)」は好きだけど、情報を網羅してまとめたような「わかりやすさ(横方向)」には、心が動かない。また、自分独自の視点を述べるのは好きだけど、どこかで誰かが説明したようなことを、自分が伝えるのは嫌いだ。「わかりやすさ」と言っても色々ある。どんな「わかりやすさ」を自分は好きなのか。得意を分解し、嫌いを取り除きながら、得意を好きに近づけていくのだ。

そうやって好きに近づけた得意なことに専念できる環境をつくる。積極的に環境を設計する。これが新しい『自分だけの好きで得意なもの』になる。得意という個性を起点にするから、自分だけの好きを見つけられる。まだ世の中にない、新しい好きを作れるのだ。

まとめ

好きと得意を一致させるには、考える順番が大事になる。好きなことを得意にするのではなく、得意なことを好きにする。そのために、得意なことを分解し、その中にある嫌いなことを取り除いていく。すると、まだ世の中にない、自分だけの好きで得意な役割が生まれるのだ。

次回は、この好きと得意が一致した自分の役割(何屋さんか)を考えていく。一体どんな何屋さんが生まれるのか。次回も楽しみにしてもらえると嬉しい。

ー 書いた人 ー
大谷 信(おおたに まこと)
大手企業でエンジニアとして勤務しながら、自分らしい働き方・生き方を模索中。ブログも連載しています。

HP https://otani-makoto.net/
Twitter https://twitter.com/OtaniMkt

感想・著者への質問はこちらから