第54回 子どもが生まれて、自分の存在意義も生まれた

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第54回 子どもが生まれて、自分の存在意義も生まれた

安田

今日は、出産の前と後で価値観に変化があったのかお聞きしてみたいなと。一般的には20代〜30代で経験する人が多い出産を、10代そこそこで体験したわけですよね。そういう方がどう感じるのか興味があって。


中辻

そうですねぇ。一番大きく変わったのは、「もうこれまでのようにフラフラはしてられへんなぁ」「この子を守っていかなきゃなぁ」と思うようになったことですね。生まれた瞬間にそう思いました。

安田

ほぉ、なるほど。出産した瞬間にそういう考えが芽生えたと。


中辻

ええ。それと同時に「ああ、私って存在していい人間なんだ」と思いましたね。

安田

ん、というと?


中辻

それまでの私は、家庭にも居場所はないし、学校では問題児扱いで、母以外のすべての人から見放されているような状況だったんです。そんな中で娘を産んで。「ああ、少なくともこの子にとって、私はかけがえのない存在なんだ」と思えたんですよね。

安田

なるほど……娘さんだけは「中辻さんのことを100%求めてくれる存在」ですもんね。


中辻

そうなんです。特に娘は完全母乳育児だったので、娘を誰かに預けることもできなくて。つまり物理的にもずっとべったりだったんです。だから余計に「この子には私しかいない」と考えるようになったのかもしれません。

安田

なるほど。一方で世の中のお母さんって、「この子には私しかいない」という感覚がプレッシャーになったりするとも言われますよね。中辻さんはそれを負担に感じたりはしなかったんですか?


中辻

まったくなかったですね。先ほど言ったように娘の存在が自己肯定にも繋がっていたので、「この子は私がいなければ生きていけない」という感覚は、むしろ自分にはプラスだったというか。

安田

へぇ、すごいですね。「子どもが重荷だ」という気持ちは全くなかったというわけですか。


中辻

なかったですね。誰かに必要とされる喜びをひしひしと感じてました。

安田

なるほど。とはいえ、子どもはだんだん大きくなっていくわけで。「1人の人間」として意思を持ち始めてくると、生意気になったり言うことを聞かなくなったりするじゃないですか。


中辻

安田さんのお子さん、今3歳くらいでしたっけ? やっぱり大変ですか?(笑)

安田

ええ。イヤイヤ期真っ只中で、毎日大変過ぎます(笑)。だから、そんな風に言う中辻さんだって、「子育てなんてやってられるか!」って時がちょびっとくらいはあったんじゃないかと。


中辻

うーん…。前にもちょっとお話しましたが、私、娘に困らされた記憶が、全くないんですよ。夜泣きもしないし、静かにしなきゃいけないところでは静かにできるし。なんていうか、本当に聞き分けの良い子で。

安田

そんな子ども、本当にいるんですか?(笑) 大変すぎて記憶から抜け落ちているだけじゃないですか?(笑)


中辻

いえいえ、本当に(笑)。困らされたことがなさ過ぎて、逆に申し訳ないなっていつも思ってましたから。いろいろ我慢したり寂しい思いをさせちゃっているんだろうなって。

安田

お母さんが頑張っている姿を間近で見ているから、娘さんも小さいなりに気を遣っていたのかもしれませんね。


中辻

ああ、確かにそうかもしれません。

安田

というか、中辻さんのお話を聞いていていつも思うのが、娘さんにもいろいろお話聞いてみたいなって(笑)。娘さんがどんな子なのかすごく興味があります。


中辻

娘は…めっちゃ変わってる子です(笑)。なんというか、他人と同じことはやりたがらないというか。本当に独特の感性を持った子だと思います。

安田

へぇ、ますます気になります。なにか印象的なエピソードとかあります?


中辻

以前、誕生日に何が欲しいか聞いたら「土偶にしようかな…。あ、やっぱり熊の剥製がいいな」って言われました(笑)。

安田

熊の剥製ですか?!


中辻

そう(笑)。ネットでめっちゃ調べたら、3万円くらいで売ってましたけど。

安田

え、じゃあそれをプレゼントしたんですか?


中辻

サイズを調べたら思った以上に大きくて、さすがにこれを部屋に置いたら邪魔だよね、と断念しました(笑)。で、次に言われたのが「広辞苑が欲しい」だったので、結局、広辞苑を誕生日プレゼントにしました(笑)。

安田

土偶、熊の剥製、広辞苑…。確かに欲しがるもののラインナップを見ても、なかなかユニークなお子さんですね(笑)。


中辻

そうなんですよ(笑)。私とは性格が正反対で、あんまり社交的ではないんですけどね。本を読んだり文章を書くのが好きな子で、今は小説も書いているみたいですよ。

安田

そうでしたか。中辻さんがずっと愛情をかけて育ててこられた娘さん、今度ぜひ対談してみたいですね(笑)。


中辻

ふふふ、実現したら面白そうですね(笑)。

安田

それにしても中辻さんのお話を聞いていると、15歳で娘さんができたことは「神様からのプレゼント」のように思えてきます。


中辻

ああ、それは本当にそう思います!

安田

私も親という立場ですが、「社会の中に居場所がなくて、家出して、15歳で妊娠した」とだけ聞くと、なんとなく可哀想だなぁ…と同情してしまうと思うんです。


中辻

確かにそれだけ聞いたら、なかなか過酷な印象ですね(笑)。でももし私が普通の家庭環境で育って、普通の結婚や出産をしたとしても、ひょっとすると今のような幸せは感じられてないかもしれないので。

安田

やはりそうですよね。そう考えると、お子さんが生まれたことで中辻さんの人生が「良い方向」に変わっていったという意味でも、15歳で妊娠・16歳で出産という出来事は、神様からのプレゼントだったんじゃないかと思います。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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