// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
今回のゲストは開業から何とか一周年を迎えることができた辻本くん。
開業してから1年経った実感としては、まさに「あっという間」だったようで、業績は決して良くなかったものの充実した手応えを感じている様子。
世間でもよく「社会人になると1年があっという間」なんて言われます。
確かにこれは私も実感した事があるのでよく分かります。
でも、この「1年があっという間」に感じることって、果たして良いことなのでしょうか?
ちょっと考えてみたいと思います。
今回の辻本くんが感じている「あっと言う間の1年」。
私たちがこの表現を使う時、よく「学生時代の1年」が比較の対象に挙げられます。
「社会人の1年は、学生時代の1年と比べものにならないくらい早い。」
この比較の言わんとしていることは「学生時代は気楽だから1年が長く感じるけど、社会人は忙しいから1年が早く感じるよね」という、ある種「社会人が上で、学生が下」のような意味合いが含まれているような気がしてなりません。
でも最近、私は思うのです。
1年があっという間に感じるのは毎日が忙しいからではなく、毎日変わらない行動をしている時間が記憶から消えてしまっているからではないか、と。
逆に、学生時代の1年が長く感じるのは決して気楽だからではなく、その1年の間に社会人よりも記憶に残るような新しい取り組みが多かったからではないか、と。
新型コロナによる営業自粛になってから、私は新しい取り組みを色々と試してきました。
その数は自粛前の通常営業をしていた頃と比べると、はるかに多い数になります。
一般的に考えられている「忙しいと1年があっという間」が正しいのであれば、私のこの1年はあっという間だったはずです。でも今から振り返ってみると、ここ1年くらいは新しい取り組みの連続で忙しかったにも関わらず、1年前があっという間どころか、はるか昔のように思えてならないのです。
その理由こそが、1年の長さを決める要素とは、実は忙しさではなく、新しく取り組んだ数の多さであり、新しく取り組んだ数が多いほど、記憶に残る量も多くなり、結果的に1年が長く感じられるのではないでしょうか?
そう考えるならば、開業1年を振り返って「あっという間だった」と充実した気持ちになっていた辻本くんは、実は売上を伸ばすための新しい取り組みをしていなかっただけと言えるのであり、新しい取り組みしていなかったからこそ、充実感がある割に売上という結果が付いてこなかった理由にもなると思うのです。
1年が早く感じるのは良いことなのか?
正解は分かりませんが私の経験だけで考えるならば、それは必ずしも良いことのようには思えず、1年があっという間に感じるのは、将来を変える新しい取り組みが欠けているサインなのかも知れません。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/