第158回 私のお店に足りなかったもの

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

まだ、自分のお店を軌道に乗せることが出来ていなかった頃、私はよくこんな事を考えていました。

「このお店に何を足せば売れるようになるのだろうか?」と。

私のお店には繁盛店にある「何か」が不足しているからであり、その「何か」を自分のお店に付け足すことができれば、自分のお店も繁盛店になれると考えていた訳です。

自分の商売が期待していたほど売れないという現実に直面した時、当時の私と同じような事を考える方は多いのではないでしょうか?

今回はそんな当時の私が取り組んだ内容について書いてみようと思います。


開業してからしばらくの間、私がやっていたこと。
それは、世間で流行っているお酒を幅広く取り揃えるということ。

「流行っているお酒を揃えておけば、集客も楽にできるだろう」
そんな安易な気持ちが私の中にあったのは事実。

でも、現実はそんなに甘くなく、開業した後の状況はこのコラムでも書いてきた通り。

そこで、現状を変えるために私がやった取り組みというのが「自分が本当に売りたい商品」に絞り、その魅力を伝えることに力を注ぐということ。

自分が売りたい商品に絞る、という行為。
これは見方を変えて考えれば「売らない商品」を決める行為とも言えます。

つまり、流行っている商品を幅広く取り揃えて売ろうとするのを止めて、流行っていないけど自分が売りたい商品の販売に集中することにしたのです。

そんな取り組みをして分かったことが2つあります。

1つは、売らない商品を決めたおかげで、売りたい商品へ労力をたくさん使えるようになったこと。もう1つは、自分が売りたい商品は魅力を伝えるためのアイデアがどんどん出てくるということ。

これは逆に考えるのであれば、扱う商品を幅広くしようとしていたから売りたい商品へ労力を使えず、世間の流行に合わせようとしていたから売るためのアイデアが出てこなかったとも言えます。

もちろんお店が繁盛する原因というのは1つではないでしょう。
ただ、今から振り返ってみると、この取り組みが私のお店にたくさんのお客さんが来てくれるようになった原因の1つになったのは間違いないと思います。

つまり、当時の私のお店に足りなかったのは、幅広い商品を扱うといった「広さ」ではなく、売らない商品を決めて売る商品を絞り込む「狭さ」だったのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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