第80回 罪悪感のない借金

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

最近は日本人が賢くなったのか、
給料日前の金欠というのをあまり聞きません。

私は社会人3年目くらいまでは、
給料日前にお金がなくて、
同僚によく借りたものです。
そして、毎月日付が早まっていき、
ボーナスで完済するということをしていました。
自分のお金でやりくりできず、
飲み歩いていたためにそうなったのですが、
だらしない人の典型と言われたものです。

だらしのない人間であったことは事実ですが、
それでも借金することには罪悪感がありましたし、
借りたものは返さねばならないという
倫理観も持っていました。

一方、
ドバイやウガンダで働いている人たちを見ると、
給料の前借りや、借金の申込みをする姿を見ます。
彼らに聞くと、
いずれ自分のものになるのだから、
先にもらうだけだとのこと。
罪悪感はあまりなさそうです。

よくよく考えると、
経営者は企業の成長を促すために、
銀行借り入れをして投資を行います。
若い経営者は、投資家に出資をしてもらい、
資金の調達をおこないます。

給料の前借りにしても出資にしても、
今、現金を持っていないので、
お金を受け取っているのは同じ、
同僚にお金を借りるのも同じなのです。
出世払いなのです。

借りたお金を何に使うのか、
消費なのか投資なのか。
貸した先が個人なのか会社なのか。
信用があるのかないのか。
意味のある借金かどうか。
返済可能かどうか。
色々議論はあるとは思いますが、
出世払いという意味では、
私には同じに見えます。

私達は知らず知らずのうちに、
出世払いの借金にどっぷり浸かっているのです。
企業はお金の余った人の株式投資や貯金から
お金を借りて成長を目指します。
年金は将来の世代の借金で賄われます。
税金は後払いですし、
カード払いはわかりやすく決裁猶予です。

最近はBNPL(Buy Now Pay Later)という
仕組みが流行っています。
お金がなくてもモノが買えるので、
もう同僚に借金をする必要はありません。
社会システムとして、
給料の前借りができるようになります。
罪悪感なしの借金ができるようになるのです。

借り入れは返済義務という縛りによって、
成り立ちます。
その根っこには、罪悪感や倫理観という
ものに支えられているような気がします。
お天道様に顔向けができないから、
お隣さんに後ろ指さされたくないから、
返済していたのかもしれません。

社会システムの進化によって、
罪悪感のない借金が増えてきました。
借金の出口は何になるというのでしょうか。
ドバイやウガンダのように、
前借りシステムをこぞって利用するようになるのか、
契約でガチガチに縛られるのか、
それとも、
まったく新しい社会システムができるのでしょうか。

 

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- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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