第74回 「先生の働き方改革?タスクシフティング」
お医者さん
ああ、今日も私以外全員が定時で帰宅か……いつから世の中はこんなに従業員に優しくなったんだろう。だが、「当たり前の権利だ!」「働き方改革だ!」と言われたら、文句も言えない。
お医者さん
従業員に働いてもらえなければ、あぶれた仕事は結局経営者である自分がやることになる。まったく……「経営者の働き方改革」も誰かにやってもらいたいもんだ。
それ、私も大賛成です。従業員の前に経営者の働き方改革ですよ。
絹川
お医者さん
そうだろう? 経営者がダメになったら職場自体がなくなるんだから。従業員はもっと経営者を大切にするべき……って、あなたは一体?
はじめまして、ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ドクターアバター? へえ、そんな仕事があるんだね。それにしても、最近の風潮は経営者にとってはちょっとつらいね。以前は当たり前だった残業も、今じゃ犯罪行為のように言われてしまう。
内心そう感じている経営者は多いでしょうね。ともあれ、この流れは今後も変わらない。そこで経営者の働き方改革なんです。
絹川
お医者さん
ん? いや、それは「そんなことできるはずがない」という意味の冗談として言っただけだよ。従業員が残業できないなら、結局私がやるしかないんだから。
そうでしょうか。私はそんなことはないと思っています。ときに先生は「タスクシフティング」という言葉をご存知ですか?
絹川
お医者さん
タスクシフティング? いや、聞いたことないな。
簡単に言えば、「医師免許が必要な業務」と「医師免許がなくてもできる業務」にわけ、先生は前者の業務だけを担当する、という方法です。
絹川
お医者さん
ふむ。……確かに最近、後者の業務もたくさんやっているな。
そうでしょう? まずはその考え方で業務を棚卸しし、後者の業務については、他の人に頼む。人手に余裕がないなら、デジタル化してしまってもいいでしょう。
絹川
お医者さん
デジタル化……最近よく聞くRPAというやつか。
仰るとおりです。もっとも、すべてをRPA化するということではなく、従業員さんに業務を割り振って、それでも溢れてしまう部分についてRPA導入を検討する、という方法でよいと思います。
絹川
お医者さん
うーん、まあ言っていることはわかるけど。そういうのって、うちのように小さな規模の病院じゃなく、総合病院とか大きな所でやるものなんじゃないの?
大きい病院だと関係各所の調整が大変で、結果、費用規模も大きくなってしまいます。そういう意味ではむしろ小規模病院の方がずっとハードルは低いと思いますよ。
絹川
そして、いろいろなことが自動化できてくると、先生の働き方改革はもちろん、結果的に従業員の働き方改革も進むことになる。
絹川
お医者さん
なるほどね(笑)。私も従業員もハッピーになるわけだ。確かに、「私と従業員だけで仕事を回すんだ」という意識はもう古いのかもしれないな。手が足りないならロボットの手を借りる、か。
そういう時代です。ロボットなら365日24時間働いてくれますしね。残業代なしで(笑)
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。