日本人は感情に流されることを恥じる
傾向にある。だから感情を露わにしない。
人前で大声を出したり、
ガハハと全身で笑ったりすることは、
とても下品なことなのだ。
ポーカーフェイスは日本ではむしろ誉め言葉である。
クールで頭がいい人のイメージではなかろうか。
感情を見せない日本人は、海外では
「分かりにくい無表情な人種」と見なされる。
だが日本人は決して感情に流されないわけではない。
むしろその逆なのである。
なぜ感情を露わにしないのか。
なぜ人前で堂々と議論を戦わせないのか。
それは感情をコントロールできない性分だからである。
どんなに適切な指摘も、
感情が拒絶することは受け入れられない。
感情のもつれがずっと後まで尾を引いてしまう。
それが日本人なのだ。
とても親切だけど味がイマイチなパン屋と、
抜群に美味しいけど接客がひどいパン屋。
あなたならどちらで買うだろう。
「両方なきゃだめだ」というのが
普通の日本人の感覚である。
美味いのは当たり前。
商売なのだから接客マナーがいいのも当たり前。
つまり理屈と感情の両方を納得させないと売れない。
これが日本で物を売ることの難しさである。
商品も接客もレベルが高い。そのぶん
高く買ってくれるのなら素晴らしいことである。
だが日本人はここに安さまで求める。
だから儲からない。
日本で商売をして利益を出すにはバランスが重要なのだ。
商品にはもちろん力を入れる。
だがこれだけでは儲からない。
いかにして感情に訴えかけるか。
ここが利益の源泉となるのである。
感情に訴えかける?「そんなものはBtoBでは
通じないよ」と言われそうである。
確かに企業は利益で動く。
だが必ずしも安くて良い商品が売れるわけではない。
購買担当も人間だから感情に左右されるのである。
ネクタイを締めた営業マンを好むのがその証拠である。
商品力だけで選ばれるのならパジャマで
営業してもいいはずだ。だがそれでは売れない。
もっともな理由をつけて断られる。
だが実際にはその態度が腹立たしいだけである。
「ちょっと高いけどこの会社はしっかりしてる」と
納得してくれるから利益が出る。
つまり感情で選ばれるから儲かるのだ。
もちろん本人はそう思っていない。
「私は感情で選んだのではない。商品説明を聞いて
そのロジックに納得したのだ」と思っている。
理屈で納得させ感情で選ばれる販売手法。
そこを練り上げることが利益への近道なのである。
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