このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。
未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。
ー 第94回 「Apeel」
国連の推計によると、毎年世界では生産された食料の3分の1が廃棄されています。この食品ロス問題に正面から挑戦しているのがApeel Sciences社です。
米国商標登録第86259063号(商標権者:Apeel Technology, Inc.)
【商標】
【指定商品/指定役務】(抄訳)
核酸の増幅等に関連する科学研究用の混合された反応物からなる化学溶液 など
Apeel Sciences社は、野菜の皮や茎などから取れる保護オイルを抽出し、野菜の鮮度を維持するコーティング剤を開発しました。スプレーとして吹きかけることで、植物由来の見えない「バリア」が表面に形成され、通常の2~3倍長く保存できるとのこと。賞味期限の“延命”です。
実はこの技術、創業者ジェームス・ロジャーが鉄の研究をしているときに思い浮かんだもの。鉄はサビると腐敗します。そのサビから鉄を守るために酸化バリアを施したのが、ステンレスです。ステンレスと同様に、「野菜の表面に薄いバリアを作ることで腐敗を遅らせられないか」と考えたことがスタートだったというのです。面白い話ですよね。
アメリカではFDAの認可を得ており、コストコやウォルマートで、コーティング済みの野菜が売られています。
未来コンパスが指すミライ
さて、Apeel Sciences社の技術を詳しく調べようと、特許や商標を検索しましたが、当初全くヒットしませんでした。大企業と取引をするには、商品やサービスが法的に問題ないことを保証する必要があり、「商品が第三者の権利を一切侵害しない」のような文言が契約書に入っています。
特許や商標を持たずに、Apeel Sciences社がこの点をどう担保しているのか。そんな疑問を持ちましたが、実にシンプルなオチ(答え)でした。
海外企業の中には、トレードネーム(取引時名称)とリーガルネーム(正式名称)とを使い分ける企業があり、Apeel Sciencesはトレードネームでした。気づいた方がいるかも知れませんが、商標権者であるApeel Technologyがリーガルネームです。リーガルネームの短縮形がトレードネームになるケースが一般的と思うので(例:TOYOTA Motor Corporation→TOYOTA)、惑わされました笑。
そんなトリッキーな名称を持つ会社ですが、創業者の言葉はストレートに腹落ちしました。
「食品ロスは私たち全員に課せられた目に見えない税金です」
どうですか。今日から食べ残し、使い残しを辞めようと思いませんか。
この記事を書いた人
八重田 貴司(やえだ たかし)
外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。
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