第191回「疑わないのはなぜ?」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第190回「大企業の終わりと優秀層の未来」

 第191回「疑わないのはなぜ?」 


安田

石塚さん、高校生の就活って詳しいですか?

石塚

まあ、そこそこ。

安田

高校生の就活って、ひとり1社しか受けられないそうで。

石塚

おっしゃる通り。

安田

学校から1社だけ推薦もらって、内定を受諾したらもう他は受けられない。

石塚

そうです。要するに「よそを見られない」ってことです。

安田

そんなのがいまだに続いてるんですね。

石塚

異常ですよ。

安田

見直そうという都道府県も全国で2つしかないって。これは利権が絡んでるんですか。

石塚

若年労働者をどういうふうに供給するかは「出来レース」でつくられてまして。

安田

出来レース?

石塚

基本9割は県内就職させろと。そのうち7割は製造業に回せっていう。まあ県ごとに若干違うんですけど。おおよそ、こういうふうに話がついてる。

安田

それは国策として。

石塚

そうです。

安田

なんか戦後のイメージですけど。

石塚

それがいまだに続いてるんですよ。

安田

当時は国の発展とリンクしてたんでしょうね。いまは逆に発展を阻害してますよ。

石塚

おっしゃる通り。

安田

なぜ変えようとしないんですかね。

石塚

やっぱ利権だからでしょ。

安田

たまったもんじゃないですね。現場の高校生は。

石塚

だから就職してすぐ辞めるんです。「高卒4割」ってよく言うでしょ。いろいろ見て決めるんじゃなく「石塚、おまえはここだ」って言われて「はあ」って。

安田

ひどい話ですね。

石塚

これだけスマホでTikTokやYouTubeを見てたら、そりゃ転職しますよ。

安田

まずは「先生が勧めてくれるところに行こう」って話になるんですか。

石塚

まあ高校生ですからね。高校の進路指導って完全に思考停止状態だし。

安田

推薦だといい会社に入れるんですか。

石塚

成績順で割り振りが決まっていて。いちばん優秀なのは、だいたい地場大手の高卒採用に行く。

安田

そういう学校推薦なら価値ありますよね。

石塚

本人の意向はどうかわからないけれど。

安田

高卒で就職活動して大手に入るって、なかなか難しいですよ。

石塚

まあ、むずかしいですね。

安田

それ以外の人は自分で就職活動すりゃいいのに。

石塚

出来ないんですよ。

安田

べつに禁止されているわけじゃないですよね。

石塚

禁止はされていないけど。そこから外れたら「だったら自分でやれ。責任負わないから」って、はしごを外されちゃうわけです。

安田

18歳ではしごを外されるのは、さすがに怖いですね。

石塚

そりゃ怖いでしょう。親も「お前なに言ってんだ」ってなるし。「学校の進路指導の先生の言うこと、よく聞けよ」って普通の親は言う。

安田

学校としては地元に就職させたいんですか。

石塚

そうです。とくに今は労働力不足だから。都市に出ていかれたりすると困るわけです。

安田

なるほど。

石塚

「高校生は地元で就職させるようにしてくれ」ってことですよ。

安田

「地元であれば3社受けてもいい」とか。緩和するのはどうですか。

石塚

そこには企業の格と序列があるから。

安田

格と序列?

石塚

「うちは○○高校から〇〇人採る」ってことで、人員計画ができてるから。

安田

もし内定を蹴ったりすると、もうその学校からはとってもらえない?

石塚

進路指導の先生が謝りに行って、代替の生徒を送って「安田が失礼なことをしてすみません。高松もいい生徒なので高松を行かせます」って、そういう話ですよ。

安田

なるほど(笑)

石塚

「ちゃんと頼むよ」「毎年うちから採用いただいてありがとうございます」「いやいや、うちも石塚さんの高校からいつもとってるから」って、要するに共存共栄です。

安田

先生が推薦したら100パーセント採用されるんですか。

石塚

よほどのことがない限り。それが高校の就職指導です。

安田

そうなんですね。

石塚

だから自由に選べない。「おまえはここ行け」って。

安田

でも結局4割は辞めちゃうわけでしょ。なぜもっと自由にさせてあげないのか。

石塚

高校生を自由にさせてしまうと「公平性が保てない」という理由です。「高校生はまだそういう判断がつかない」って。ふざけた理由なんですけど。

安田

成人を18歳にしようって話になってるのに。

石塚

誰もそんなこと言い出さない。そこはアンタッチャブルなんですよ。

安田

どっちが反対してるんですか?企業側か。学校側か。

石塚

両者とも変えたくないと思います。

安田

先生はもっと生徒寄りでいい気がしますけど。

石塚

「変える」とか言った日には、たぶんその先生、僻地の高校に飛ばされるでしょうね。自由にものなんか言えないから。

安田

そういう世界なんですね。

石塚

それに高校の進路指導も人員が足りないから。サポートしきれない。

安田

なるほど。

石塚

だから今まで通り「決められたとおり今年もやりましょう」「それでみんな幸せじゃないですか」って。

安田

少なくとも職業選択の自由を得るために、大学に行く価値はあるってことですね。

石塚

どうでしょう。転職すりゃいいだけの話だから。1社でずっと勤め上げるってこと自体、いまの世の中ありえないですから。

安田

最初に入った会社の影響ってすごく大きいと思いますけど。

石塚

大きいですね。

安田

「仕事とはこういうものだ」って価値観が、ほぼそこでできあがっちゃう。

石塚

安田さんの場合は、それがリクルートだったと。

安田

そうでしたね。

石塚

影響はすごく強かったですか。

安田

私は大学卒業してましたけど。それでも社会に出たことがなかったですから、影響は大きかったです。

石塚

まあ、そこまでを考えてないんでしょうね。昔からこうだからって誰も疑わない。

安田

親も疑わないんでしょうか。現場で社会の変化を目の当たりにしてるはずなのに。

石塚

疑わないです。自己否定につながるので。親も現場で昭和のシステムをそのまま使ってるわけですから。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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