このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/140年目の若手たち
“日本資本主義の父・渋沢栄一氏”も設立に関わった染色会社をルーツに持つ、某上場企業が、“創業140周年”を迎えた時の話です。
これだけ長い歴史を持つ会社の周年事業となれば、盛大な式典や記念品、社史の制作などを思い浮かべます。
ところが、同社が取り組んだのは、“ネパールにコーヒーの木を植えること”でした。
しかも、その企画を発案したのは、経営陣でも周年事業の専門部署でもありません。“有志の若手社員たち”でした。
きっかけは、前年に開催された社内研修です。
若手社員たちは、そこでコーヒー産業が抱える社会課題について学びました。私たちにとって身近な飲み物であるコーヒーも、森林伐採や気候変動などの影響によって、“将来的な生産量の減少”が懸念されています。
彼らは、講座を聞いて終わりにはしませんでした。
「会社として、何かできないだろうか?」
そんな思いから生まれたのが、持続可能なコーヒー栽培を支援するため、ネパールにコーヒーの木を植えるという提案でした。
そして会社は、そのアイデアを“創業140周年の記念プロジェクト”として採用しました。
植えられたコーヒーの木は、すぐに実をつけるわけではありません。
順調に育てば、収穫は約3年後。そこで採れたコーヒー豆が、社員たちのもとへ届く予定だといいます。
記念品を配れば、その日のうちに社員の手元へ届きます。しかし、今回植えたものが届くのは3年後です。
その頃、会社はどうなっているのでしょうか。
提案した若手社員たちは、“どんな仕事を任され、どんな先輩になっているのでしょうか”。そして、140周年を迎えた会社は、次の150周年に向けて、どんな歩みを進めているのでしょうか。
まだ実らない木を植えるということは、“未来を信じて待つ”ということでもあります。
そして、この取り組みでもう一つ印象的なのは、140周年という大切な節目に、会社が若手社員の提案を採用したことです。
長く続く会社ほど、“過去を大切”にします。
“歴史、伝統、これまで会社を支えてきた人たち”。
もちろん、それらを振り返り、感謝を伝えることには大きな意味があります。
一方で、周年とは過去を祝うだけの日ではありません。
「次の時代を、誰と創っていくのか」を示す機会でもあります。
若手社員の“小さな問題意識”を、会社の“大きな節目”に重ねる。
それは、「これからの会社を、皆さんと一緒につくりたい」という、“経営から若手へのメッセージ”にも見えます。
理念は、WEBに載せることができます。
ですが、その理念を本当に大切にしているかどうかは、“誰の声を拾い、誰に未来を託したか”に表れるのかもしれません。
創業140周年に植えたのは、コーヒーの木だけではありません。
若手の中に芽生えた小さな志を、会社の未来へと植えたのです。
3年後、その木から届く一杯のコーヒーは、きっと“特別な味”がするのでしょうね。

















