第110回 「待ち時間を楽しみに患者さんが来る病院?」
お医者さん
ああ、今日も思ったように待ち時間が短縮できなかったな。患者さんは不満に思っただろう……。
お医者さん
とはいえ、今のスタッフ数だとできることには限りがあるし、大きな病院のように無人受付システムを導入するようなお金もないし。一体どうすればいいんだろうな。
どうしてそんなに「待ち時間短縮」にこだわるんです?
絹川
お医者さん
いや……本で読んだんですよ。患者数を増やすには結局、患者さんの満足度を上げることなんだって。待ち時間が短くなれば、満足度も上がるかなって。……って、あなたは一体?
はじめまして。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ドクターアバター? へえ、なんだか今風な感じですね。やっぱり流行りの「DX化」とか、そういうことに詳しいんですか。
そうですね、DXに関するケースも多いです。とはいえ、病院って結局は人間同士のコミュニケーションが重要な業態ですからね。なんでもかんでもデジタル化すればいいってものじゃない。
絹川
お医者さん
あ、それ、すごくよくわかります。うちの病院は父の時代からそういうコミュニケーションを大事にしていて……だから後を継いだ僕も同じようにしてるんですけど。でも、患者さん一人ひとりとじっくり向き合っていると、どうしても診察時間は長くなってしまう。結果、患者さんを待たせてしまうことも多くて。
なるほど、それで待ち時間短縮をしようと考えたんですね。でも私は、そんなことしなくてもいいように感じますけれど。
絹川
お医者さん
え? いや、でも、待ち時間が長くて嬉しい人はいませんし。それに実際、患者数も減ってきているんです。どうにか対応しなければ。
でもですよ、待ち時間が短縮されるってことは、要するに患者さん一人あたりの診察時間を短くするってことですよね。そうなると先生がお父様の時代から大切にしてきた「患者さんとのコミュニケーション」の部分で、患者さんの満足度は下がってしまうんじゃないですか?
絹川
お医者さん
……確かに。でも、じゃあどうしたらいいんでしょう。
そうですね、「不満に感じない待ち時間」にすればどうでしょう?
絹川
お医者さん
は?
逆に言えば、「楽しい待ち時間」にしちゃえばいい。例えば、簡単なところで言えば無料Wi-Fiを入れてみるとか。さらに、新聞や雑誌、漫画も置くようにして、ちょっとした給茶機でも入れれば、もうこれは漫画喫茶と同じですよ。
絹川
お医者さん
あっ、なるほど。
漫画喫茶を無料で使えると考えれば、ただ待つだけの時間が、ちょっと楽しい時間になりませんか。「今度はあの漫画入れてほしいな」なんて、今まで以上にコミュニケーションも活発になるように思いますけれど。
絹川
お医者さん
ああ〜いいかもしれません。患者さんとは「ご近所付さん」みたいな関係でいたいと思っていたので。
先生のキャラクターから言っても、デジタル化してサクサク効率的に診察するより、そっちの方が合っている気がしますね。もちろんWi-Fiや新聞というのは一つの案でしかなくて、他にいくらでも考えられると思います。大事なのは「どうしたらもっと患者さんは喜んでくれるかな」と、自分の病院の特徴も踏まえて考えてみるということです。
絹川
お医者さん
うん、そうですね!うちにはうちの良さがあるのだし、それを活かしたまま、かつ患者さんにも喜んでもらえる方法を考えてみたいと思います。
ぜひそうしてみてください!その過程で「ここはデジタル化した方がいいかもな…」というところが出てきたら、そこは遠慮なくテクノロジーの力を使う。そんな順番でいいと思います。
絹川
お医者さん
確かにそうですよね。ああ、なんだか少し気持ちが楽になりました。よかったらまた相談させてください!
もちろんです!お気軽にお声掛けください。
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。