保険診療は”国の下請け”?〜お医者さんは、なやんでる。 第125回〜

第125回 「保険診療は”国の下請け”?」

お医者さん
お医者さん
(同級生たちとの忘年会の帰り道)いや、楽しい飲み会だったな。たまにはこういうのもいいもんだ。…それにしても久しぶりに皆に会ったが、それぞれ大変そうだったな。会社員のあいつは賞与が出ず、工場経営のあいつは不渡りを出しそう、か。
お医者さん
お医者さん
なんというか、ああ言う話を聞くと「何だかんだ医師は実入りがいいんだな」と感じてしまうな…。まあ、そう言いつつウチの経営もどんどん悪くなっているわけだが。
おや、先生。こんなところで偶然ですね!
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ん? ああ、絹川くんじゃないか。君も忘年会かね?
そんな感じです。お取引のあるお医者さんと飲んでまして。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
医者か。まあ、私も含めてだが、医者をやれてるだけで幸せなのかもしれんなあ。さっきまで同級生たちと会っていたんだが、みな本当に厳しそうでね。
確かに、円安だ物価高だと世の中は不景気モードですよね。飲食店なんかはコロナの影響をもろに受けてますし。とはいえ、今日会っていたお医者さんも言っていましたが、医療の世界もかなり厳しくないですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……まあ、な。ウチもどんどん売上は下がってきてるよ。コロナというより、国の医療費削減の方針の影響が大きいが。
仰る通りですね。今や国公立の病院は赤字の方が多いですし、民間でもM&Aによる再編が進んでいます。少子化も深刻で、今後ますます患者数は減っていきますし。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
はぁ……確かにそう言われると、仲間たちよりマシ、なんて安心している場合じゃないよな。ただなあ……保険診療というシステムの中で、工夫できるところはそう多くない。
そうですね。今日飲んでいた時に先生に言って怒られちゃったんですが、保険診療って、要するに「国の下請け」なんですよね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……絹川くんね、そりゃそんな言い方をしたら医者はムッと来るもんだよ。
でも先生、実際そうじゃないですか。国は今後も医療費削減をガンガンに進めてきますよ。でも下請けでいる限り言うことを聞き続けなければならない。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そんなことはわかっている。いいかね、人というのは図星なときほど怒るもんだ。
もちろん私もわかっています。この業界は長いですからね。でも、別に「下請けでいなければならない」という法律はないんです。民間企業と同じで、下請けを脱却して元請けになればいい。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、出た出た。保険診療をやめて自由診療に転換する、という事を言いたいんだろう? 以前もそんな事を言っていたものな。
端的に言えばそういうことです。私は全国のお医者さんが皆、自由診療に挑戦すればいいと思ってますからね。そうして国から価格決定権を取り戻すんです!
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、そんな大声で。君、なかなかに酔っているようだな。……しかし、そう言われると確かに、こちらが値決めをできない状況はよくないよな。稲盛和夫さんの言葉にも『値決めは経営』というのがあるし。
値決めは経営!まさにそうですよね。無理だ無理だと言ってないで、ほんの小さなことからでも挑戦していきましょうよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふむ。酔ってるせいで物言いもストレートだな。しかし、確かにその通りだ。無理だ無理だと言っていては何も変わらない。……実際、自分もさっき仲間たちに「できることから改善していけよ」と偉そうに言ったばかりだった。
お医者さん
お医者さん
よし!これを機にあらためて前向きに考えてみようじゃないか。時に絹川くん、今からもう一軒つきあわないかね? 自由診療に向けての相談をしたいんだ。
いいですね!喜んで!
絹川
絹川

 

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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