第228回「大手家電メーカーの現状」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第227回「定位安定の未来」

 第228回「大手家電メーカーの現状」 


安田

国を挙げて「東芝を守らなくちゃ」という話になってます。東芝って軍需産業に使われる部品も扱っていて。つぶすわけにいかないそうです。

石塚

もう時間の問題じゃないですか。

安田

銀行が「そんな危ないところにお金貸せません」って言ってるみたいで。

石塚

そりゃあ言いますよ(笑)

安田

東芝でも貸し渋りに遭うんですね。

石塚

アメリカのウェスティングハウスを買ったあたりで、一気にバランスシートが悪くなっちゃった。銀行もバランスシートが優良じゃないと貸したくないんですよ。

安田

東芝といえどもバランスシートですか。

石塚

融資はぜんぶバランスシートで、13段階のランク付けをしてるから。まあ銀行は尻込みするんじゃないですか。

安田

でもバランスシートが優良な企業って、銀行から借りる必要がないじゃないですか。

石塚

おっしゃる通り。

安田

こういう所でリスクを取ってこその銀行じゃないんですか。

石塚

30年前ぐらいだったら、銀行から社長を送って再建させたものですよ。

安田

今はもう銀行にも余裕がないんですか。

石塚

というか人がいないでしょう。そんな優秀な人。

安田

銀行には優秀な人が集まってそうですけど。

石塚

そんな人いませんよ。

安田

へぇ~。

石塚

かつての伊藤忠と安宅産業の合併のときみたいな、あんなのはもう無理です。

安田

東芝って最終的にどうなるんでしょうか。

石塚

ゆっくり死ぬと思います。

安田

死にますか。

石塚

ゆっくり死ぬ。

安田

「外資に買わせるな」「なんとか守れ」ってネットでは言ってますけど。

石塚

もうそんな余裕がないんですよ。

安田

それは日本という国に余裕がないってことですか。

石塚

そう。経済産業省が「ノー」って言ったから、外資ファンドに売るのは止めたけど。もはや「東芝の価値って何なのか」ってことを冷静に考えないといけない。

安田

国防に関してはどうですか。海外に買われるとまずいんじゃないですか。

石塚

どうせアメリカの装備品を買わされるんだから。アメリカの会社に引き取ってもらえば辻褄合うじゃないですか。

安田

アメリカに売るなら問題ないと。

石塚

中国じゃなきゃいいですよ、べつに。

安田

いまさらアメリカの会社に買われても「リスク」だとは言えない。

石塚

日本長期信用銀行だってアメリカに売ったじゃないですか。

安田

え!そうなんですか?

石塚

はい。リップルウッドっていうアメリカのファンドに売りました。

安田

もう前例があるんですね。

石塚

いまは新生銀行になって、もうみんな忘れてるけど。バブルの過剰融資で焦げ付いた不動産、債権は、ほとんどアメリカが買っていったじゃないですか。

安田

いわゆるハゲタカファンドでしょうか。

石塚

ファンドとはそういうものですから。弱るまでずっと横で見ていて、いちばん弱ったところで「どうだ」と言ってくる。

安田

弱るのを待ってるわけですか。

石塚

「お願いします」って言ってくるのをずっと待ってる。柿が熟して落ちるのを待っているようなイメージですよ。

安田

外資が東芝を買うとしたら何が魅力的なんですか。ブランドですか?技術ですか?それとも工場とか人材ですか? 

石塚

まず技術ですね。

安田

技術はあるんですね。

石塚

総合的じゃないけど、部分部分ではやっぱりいい技術はあると思います。次にちゃんと製品化できる製造工場の能力。

安田

ファンドが買ったら、そういう技術や工場を切り離して売っ払うんですか。

石塚

そうなんですけど、東芝はすでに主要どころはぜんぶ売られてるんです。

安田

もう売るものがないと。

石塚

「金のなる木」はみんな売っちゃって、もう息も絶え絶えなんですよ。あとは軍事のそういうところぐらいしかないはずです。

安田

そんな「息も絶え絶え」な会社に軍事関係なんて任せていいんですか。

石塚

これがいまの日本の実力なんでしょうね。日本の大手家電メーカーでメンテナンスをちゃんとやるところなんて、もうほとんどないから。

安田

そうなんですか。

石塚

この前エアコンを買ったんですけど。「パナソニック、日立、東芝はやめたほうがいい」って言われました。

安田

もう選択肢がないじゃないですか。

石塚

ダイキンを勧められて買いました。ダイキンはエアコン専業だから、ちゃんと受付のコンタクトセンターを持っていて、そこは動くと。

安田

他はダメなんですね。

石塚

いわゆる家電総合メーカーは売りっぱなしだそうです。商品も昔ほどよくできていない。

安田

うちはエアコン3台ぜんぶ日本製ですけど、壊れないのは三菱の霧ヶ峰だけです。

石塚

だけど三菱も今、社内の不祥事とかパワハラの問題がいっぱいあって。

安田

パナソニックはダメなんですか?天下の松下ですけど。

石塚

パナソニックなんか、もう、いちばん壊れますよ。無駄に高いし。

安田

あらららら。

石塚

壊れないことには次の買い替え需要がないから。もう家電メーカーもそんな感じなんです。

安田

昔はずっと修理してくれたのに。ちなみに東芝のブランドって、世界ではまだ通用するんですか。

石塚

しないと思う。国内でさえ厳しいですから。だって安田さんの周りに東芝の家電製品ってありますか。

安田

東芝の家電はないですね。「サザエさん」も終わっちゃいましたし(笑)

石塚

国も最後まで面倒見きれないんじゃないかと思う。

安田

防衛の技術はどうするんですか?

石塚

いま労働人口1人あたりの研究開発費、世界トップってどの国か知ってますか?

安田

中国じゃないんですか?

石塚

これが韓国なんですよ。音楽もそうだけど、韓国って国内で食えないから世界に行くんです。

安田

日本は中途半端ですよね。国内にとどまっていれば、それなりに食えてしまうし。

石塚

だから日本は全産業を薄く広くやろうとしちゃう。このやり方ではもう世界では勝てないです。

\ これまでの対談を見る /

石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

感想・著者への質問はこちらから