第145回 「医師事務作業補助者とは?」
お医者さん
ああ、また納得してもらえなかった。自分のやり方を曲げたくないのはわかるけど……この令和時代に紙カルテって。しかもドイツ語混じりだし。
お医者さん
うーん、なんとか電カル導入を理解してもらいたいけど……でも実際、院長はオヤジだもんなあ。どうしたものか。
長年やってきたやり方はなかなか変えたくないんでしょうね。よくお聞きする話です。
絹川
お医者さん
まあ、気持ちはわかるんだけどさ。でもさすがに時代遅れ過ぎて……って、あなたは一体?
初めまして。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
あ、初めまして。へえ、今はそんなお仕事があるんですね。僕の悩みも聞いてほしいですよ。
もちろんです。……ときに先ほどの話ですが、院長であるお父様が電カル導入に反対されているということですかね。
絹川
お医者さん
ええ、困ったものです。昔ながらの人で、腕はいいんだけど頑固でね。「自分は必要ないものだからいらない」の一点張りですよ。どうしたものか。
院長くらいの後年代の先生の場合は、むしろそういう反応の方が普通です。パソコンやスマホなんてなくてもやってきたんだ、なぜ必要なんだという。
絹川
お医者さん
そうなんですよ。まあ、その気持ちはわからくもないですよ? でも、あなたはよくても僕やスタッフは使いたい、って話なんですよ。でも、何度話しても納得してくれなくて。
そういう場合、「医師事務作業補助者」の雇用を検討してみるのもいいかもしれませんね。
絹川
お医者さん
医師事務作業補助者? なんですかそれ。
電子カルテの代行入力を行ったり、文書類を作成したり、医師の秘書的業務を行ったりする職種のことです。2008年の診療報酬改定当たりから登場した、比較的新しい働き方です。
絹川
お医者さん
へえ、そうなんですね。資格とかがあるってことですか?
ええ。持っていることが必須ではないものの、資格自体はいくつかあります。こういう方にサポートをしてもらうと、お父様の気持ちも変わるかもしれませんよ。
絹川
お医者さん
そんなにうまくいきますかね。うちの父、あんまり変化を好まないからなあ。
お父様には今まで通り、紙カルテにドイツ語で書いてもらえばいいんです。それを医師事務作業補助者が電カルに入力していくだけなので、診察についてはほぼ今までも変わらないと思いますよ。
絹川
お医者さん
なるほど、確かにそうかもしれませんね。
さらに言えば、電カルの入力代行だけじゃなく、秘書的な業務もあれこれやってくれますから。お父様くらいの年代の方だと、「秘書がいる」というのはちょっとしたステータスですから。きっと喜ばれるんじゃないかと。
絹川
お医者さん
ああ! 確かにオヤジ、そういうの好きそうです。「電カル導入しようよ」じゃなくて「秘書つけようよ」って話せば反応は全然違う気がします。
そうですよね。「今はこういう時代なんだから黙って従って」と言われたら、やっぱり反発を感じるわけで。相手側の気持ちも考えた提案が大切なんでしょうね。
絹川
お医者さん
……まあ、そりゃそうですよね。僕も思いやりが足りなかったかもしれないな。
技術っていうのはあくまで道具ですからね。結局は仕事も人間同士のやり取りでできているわけで、思いやりは何より重要な気がします。
絹川
お医者さん
いや……なんというか、ありがとうございます。少し視野が狭くなっていたようです。
とんでもないです。ということで、医師事務作業補助者をご検討ください。医師のタスクシフティングを考えれば、先生ご自身も導入されてもいいかもしれませんよ。
絹川
お医者さん
ああ、なるほど。そうかもしれませんね。ちょっと前向きに考えてみます!
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。