第2回 「都会では商売しない」のはなぜか。

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国13店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第2回 「都会では商売しない」のはなぜか。

安田
前回は、普通のリユースショップから「遊べるリユースショップ」に鞍替えして大成功した、というお話でしたね。キッカケになったのは鬼滅の刃ブームだったと。

倉橋
そうですね。鬼滅の刃のクレーンゲームが大当たりしたことで、「遊べるリユースショップ」というコンセプトができたわけです。でも、恐らく意外だと思うんですけど、実は今の取り扱い商品の45%は「食品」なんですよ。
安田
えっ!? リユースの食品ですか?

倉橋
ああ、いえ、もちろん食品は「中古」じゃないですよ(笑)。新品を仕入れて、それをゲームの景品なんかにしているわけです。
安田
ああ、そういうことですね。例えばどんなものなんですか? 「最高級の松阪牛」が取れるUFOキャッチャーとかですか(笑)。

倉橋
いや、そこまでのものはないですが、ファミリーのお母さんが普段買っているものの「1ランク上」を意識するようにしてますね。たとえば、ちょっと高級なカレールーとか。
安田
ははぁ。カレールーを景品にしているわけですか。でも、UFOキャチャーで取るにはちょっと重そうな気もしますけど。

倉橋
景品そのものをマシンに入れておく必要はないんです。たとえばガチャガチャ用のボールに引換券を入れておいて、それをカウンターなどで交換する形にすればいいわけで。
安田
ああ、確かにそうか。そういう意味ではどんなものも景品にできそうですね。たとえばお酒とか。

倉橋
ああ、お酒は難しいんですよね。というのも、「ゲームの景品は原価800円を超えてはいけない」ってルールがありまして。
安田
えっ、そんなルールがあるんですか。誰が決めたんです?

倉橋
簡単に言えば警察ですね。ですからウチのバイヤーさんたちはその金額を死守して仕入れをしています(笑)。
安田
へえぇ。でも、世の中には1000円ガチャとか3000円ガチャとかもあるじゃないですか。800円を超えてますよ。

倉橋
ああ、ガチャはゲームじゃないんです。あれは法律的には「物販」。だから原価の上限はないんです。
安田
へえ、ガチャだって充分ゲーム性がある気がしますけど(笑)。ということは、「フェラーリが当たるUFOキャッチャー」はNGなわけですね。

倉橋
そういうことです(笑)。
安田
なるほどなあ。ともあれ、いわゆる普通のリユースショップだった万代は、アミューズメント性を取り入れることで業態を変えた、と。結果、お客さんは増えたんでしょうか。

倉橋
ええ、増えましたね。だいたい1.5倍にはなっています。
安田
へえ! それは大成功ですね。それを受けてどんどん新店舗を作っているということですか?

倉橋
もちろんそれもあるんですが、端的に言って、既存店舗を変えるより新店舗を出しちゃったほうが簡単、という事情もあるんです。というのも、本来リユース事業とアミューズメント事業って、売り場の作りから接客方法までまるで違うんですよ。
安田
へえ、そうなんですか。

倉橋
ええ。たとえばリユース事業の場合は、「お宝発見」というのが1つのテーマなわけです。素敵なお宝をお客様自身で探し当てる、その喜びを重視していた。だからスタッフがこちらから声をかけることはないし、むしろ声をかけてはいけないと教育していたんですね。
安田
しかしアミューズメント事業になると、事情が変わる。

倉橋
そちらは完全にサービス業ですから、お客さんが困っていたらすぐに気付いて声をかけなきゃいけない。今までは「接客するな」と言っていたのに、今日からは「ガンガン接客しろ」と言われたら、スタッフも困惑するでしょう?
安田
そうでしょうねえ。求める人材のタイプも変わってきますし。なるほど、だから新店舗をイチから作って、そういう人材を最初から採用する方が早いと。

倉橋
そういうことなんです。もちろん既存店舗も順次モデルチェンジしてはいるんですが、新店舗の方がスタートしやすいのは事実ですね。
安田
今は確か13店舗ですよね。そのうちアミューズメント業態として新規OPENさせたのは何店舗なんですか?

倉橋
5店舗ですね。
安田
へえ、すごいですね。ちなみにここだけの話、1店舗つくるのにどれくらいお金かかるんですか?

倉橋
どうでしょう、商品代やゲーム機などを含めると、2億円くらいはかかるでしょうね。
安田
1店舗2億円で、それが5店舗ということは……いや、すごいなぁ。ところで以前から気になっていたんですが、もともと万代さんは仙台エリア中心で、そこから東北、北海道と、いわばどんどん田舎に進出してるわけじゃないですか。

倉橋
そうですね(笑)。私自身、「都会では商売しない」と公言してますから。
安田
こんな過疎化時代に大丈夫なのかなって思うんですけど(笑)。

倉橋
笑。それが大丈夫なんです。というのも、たとえば鬼滅の刃のブームのとき、東京に100商品があるとしたら、北海道の札幌だと70くらいしかないわけです。東北の県庁所在地だと50、それ以外のもっとローカルだと30しかない。……その一方で、ネットのお陰で情報は全国に等しく行き渡っている。
安田
ああ、なるほど。どんな田舎の子でもネットを通じて鬼滅の刃は知っているから、商品に対するニーズは存在すると。でも、東京に比べて明らかに人数は少ないわけでしょう?

倉橋
ええ。人数は少ないけれど、商品を売っている店も少ないわけです。東京みたいに何十、何百も競合がいる中で戦うより、勝率は上げやすい。
安田
そうか、つまり「田舎の方が儲けやすい」ってことなんですね。それはリユース事業だけじゃなくどんな事業でもそうなんですか?

倉橋
鬼滅の刃のような、いわゆる「キラーコンテンツ」に関してはそう言えると思いますね。
安田
おもしろいなあ。ということは、みんな人通りの多いところに店を出そうとしますけど、実はそれはあんまり必要じゃないと。

倉橋
ええ、人通りに関しては私はあんまり意識していませんね。でも、最低でも25万人の商圏は必須だなと思っています。
安田
ほう、すごく具体的なんですね。25万人というと、北海道だと何都市くらいありますか。

倉橋
7都市、8都市くらいですかね。
安田
じゃあ、その8都市には全部店舗を作る予定だと。

倉橋
そういうことです。なのですごくシンプルですよね。25万人の商圏があるエリアの、一番栄えているエリア。それが私の出店地になるんです。
安田
さすが商売人。明確な基準をお持ちですね。来週もそのノウハウ、もっと教えてください!

対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に13店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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