第188回 苦行も楽しめ

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/苦行も楽しめ

「かたつむり そろそろ登れ 富士の山」

上司:この句、知ってる?

部下:いえ。どなたの俳句なんですか?

上司:“小林一茶” だよ。

部下:ああ。江戸時代に活躍した「三大俳人」ですね。

上司:そうそう。他の二人は知ってる?

部下:“松尾芭蕉”“与謝蕪村”ですよね。

上司:さすがだね。これは、一茶が詠んだ句なんだ。意味はわかるかな?

部下:焦らずに、ゆっくり、一歩一歩進め、ってことですか?

上司:そう感じるよね。でもね。アメリカの有名な小説では、こんな風に訳されているんだ。

「焦らなくて良いよ。そんなことより、過程そのものを楽しむんだ!」ってね。

部下:富士山を登る過程、しんどい行動そのものを楽しめってことですか?

上司:そう。ぼくらがどんなに一生懸命頑張っても、結果は運もあるだろうし、“神のみぞ知る“ だよね?

だとすると、その過程だけが、ぼくらが堪能できる時間だろ?
苦行であっても、楽しむ気持ちが大事ってことだよ。

30代までの僕は、同期で一番出世が早かったんだよ。

たまたま配属先に恵まれたってこともあったんだけどさ。ラッキーな時間を過ごしていたと思っていたんだ。

一方、Hさんは、30代までは、全く目立ってなくてさ。新卒入社の時から、しんどい部署を転々としてたんだよね。

でも、そこでのしんどい経験をバネに、どんどん改善提案を進めてさ、今じゃ、社長になってるでしょ。

部下:目立たない、しんどい部署に配属されたおかげでってことですか?

上司:そう。希望通りの配属先にならなかったなんて、大したことじゃないってこと。

どこでだって、その過程を楽しみまくれば道は拓けるってことだよ。そうH社長が言ってたよ。

部下:ありがとうございます。新人の配属先決定面談の時に、活用させてもらいますね。

あ!ちなみに、さっきのアメリカの有名な小説って、ジョン万次郎のことですか?

上司:お!さすがだね。その通りだよ!

上記のやりとりは、某大手さん人事部門の、部長と採用責任者との面談に同席させてもらった時の実話です。

「苦行であっても、その過程を楽しめ」

なんだか、大手で活躍している方々ってすごいな、と感じた出来事でした。

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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