第241回 余裕なき国家の未来

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第241回「余裕なき国家の未来」


安田

物議を醸したフランス研修があったじゃないですか。自民党の女性議員がエッフェル塔の前で写真を撮って、SNSにアップして。

久野

ありましたね。

安田

あれ賛否が分かれてまして。「税金の無駄遣いだ」って人が多いんですけど。脳科学者の茂木さんは「日本人は心の余裕がなくなった」と言ってます。

久野

私もなぜいけないのか分からなくて。これ叩く人って、あまりに人として余裕がないと感じます。

安田

茂木さんもそう言ってるんですけど。反論が凄くて。「あなたは余裕があるから、そんなことを言えるんだ。ほとんどの日本人はもう余裕がないんだ」って。

久野

要は研修の中身ですよね。写真を撮ったことが悪いんじゃなく。

安田

ビジネスクラスでの移動とか、レポートの内容が「本を読んだらわかる程度のことだ」って叩かれてます。

久野

そんな研修に税金を使うなら自分たちに使えってことでしょうね。でもこういう研修って政治的な理由も絶対あるはずなんですよ。国家として最低限やらなきゃいけないことで。

安田

SNSにアップしたから叩かれたと思うんですけど。「こんな写真をアップしたら国民がどう思うか、そんなことすら分からないのか」って言われていて。

久野

私も一緒に行ったらアップしてると思います。炎上してるかも(笑)

安田

こういうのを叩く人って一部だったじゃないですか。でも今回は多くの人が腹を立てていて。国民に余裕がなくなったのも事実でしょうね。

久野

うーん。どうなんでしょう。

安田

なんでこんなことぐらいで腹を立てるの?って私は思いますけど。確かに無駄もあるけど、そもそも研修ってそんなもんでしょう。2割ぐらい役に立てばいいほうで。

久野

社員研修だってそうですよ。

安田

ですよね。自分たちも会社のお金で似たようなことをしているはずなのに。他人の無駄にはほんと厳しいですよ。

久野

そうですよね。

安田

「俺たちの金だ」って言うんですけど。そういう人に限って大して税金も払ってなくて。払ってる以上に恩恵を受けてると思うんですけど。

久野

やっぱり気持ちに余裕がないんでしょうね。

安田

「自分たちはこんなにしんどいのにエッフェル塔に行きやがって」っていう。ストレス発散の対象になってます。

久野

お金って使わないと返ってこないですから。こういうところも含めて。

安田

人数や飛行機を多少切り詰めたところで、自分たちの生活に影響ないと思うんですけど。

久野

まあSNSへの投稿は気を付けないといけないですね。すぐに叩かれちゃう時代だから。

安田

元官僚さんが言ってましたけど、一生懸命国のこと考えてやっても全く評価されないって。国民にも尊敬されないからやる気がなくなっちゃうそうです。

久野

そりゃそうですよ。官僚になる人なんて頭もいいし、努力もすごいですから。夜遅くまで働いて大変な仕事だと思います。

安田

SNSにアップすべきではなかったかもしれませんけど。でもこんなに国民が怒るほどのことなのか。貧すれば鈍すると言いますけど揚げ足取りに見えちゃいます。

久野

最近ひどいのが、「海外に寄付するぐらいなら日本人にもっと金を渡せ」って言うじゃないですか。なんか儲かってない会社によく似てるなって思います。

安田

儲かってない会社ですか。

久野

何かに投資をすると「そんなお金があるなら社員に配れ」ってすぐ叩くじゃないですか。それと同じに見えてしょうがない。

安田

確かに根っこは同じですね。社員の報酬を増すには投資も必要なのに。そもそも自分で仕事を頑張って報酬を増やせばいいだけで。

久野

そうなんですよ。与えられるのが当たり前になっていて。

安田

日本人に生まれたってだけで、「海外の貧乏人のことは知らん」「日本人にだけ配れ」って、感覚がちょっとおかしいですよ。

久野

困っているということで言えば、日本人よりもっと困っている人がたくさんいるわけで。

安田

心が荒んでますよ。

久野

こういうのがスタンダードになっちゃうと、日本って本当に生きづらくなる。一生懸命やってる人たちが報われない社会になっていきますよ。一瞬だけ切り取ってここまで叩いて。

安田

じつは現地ですごく役に立つこととか、やってきてるかもしれないですよ。

久野

ほんとそうですよ。理解できない人が分かった風に言えることじゃない。

安田

たかがエッフェル塔で写真を撮っただけで。こんなに叩かれて。

久野

自分は一切サボらずに仕事をしてるのか?って問いかけてみて欲しい。

安田

自分のことは棚に上げて人の足を引っ張るんですよ。しんどい国になってきました。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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