第19回 プロも楽しめる「セミプロショップ」が理想

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国13店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第19回 プロも楽しめる「セミプロショップ」が理想

安田

消費者が専門化しているというお話を以前伺いましたね。お客さんの需要がどんどんニッチになっているから、店側もニッチ化していく方がいいと。とはいえ、絞り込み過ぎると誰も来なくなってしまうんじゃないですか?


倉橋

確かにそれは僕もずっと研究しているテーマです。絞り込みすぎて「プロショップ」のようになってしまうと、一般の方に対する敷居が高くなってしまうんですよね。

安田

一部のマニアしか来ないお店になってしまいますよね。でも世の中って「ちょっと好き」とか「ちょっと興味がある」という層が大半なわけで。


倉橋
そうそう。私としては、「セミプロ」くらいの人が一番心地よく感じられる店作りを目指してます。
安田
なるほど。でもそうなると、マニアの人が「もっとプロ感の強いものを置いてくれよ」となっちゃう気もしますけど。

倉橋
とはいえあまりにプロ感の強い商品ばかりになると、こちらのメインターゲットであるセミプロを遠ざけてしまうので。そのあたりの塩梅はけっこう注意していますね。
安田
何かが話題になったり、ブームになったりする時って、いわゆるファーストペンギン的な人がいて、そこから広がっていくと思うんです。そう考えると、「マニアなプロが通う店」もアリな気がしますけど。

倉橋
確かにそうなんですが、優先度はやはりセミプロですね。セミプロが利用できる気軽さを保ちながら、プロにも認めてもらえるようなお店がベストです。
安田

ははぁ、つまり「マニアなプロも楽しめるセミプロショップ」ということですか。


倉橋

そんな感じです。だからたまには値付けを間違うぐらいでいいと思っていて。値付けが甘いとセミプロの人は買いやすいですし、プロも「この店わかってないな〜」なんてマウントが取れて楽しめるので。

安田
確かに(笑)。ちょっと隙がある方が、愛されるお店になる気がしますね。

倉橋
そうですね。そういう意味では、セミプロかプロかというより、「お店のファン」をいかに増やしていくかが大事なんでしょうね。
安田
なるほどなぁ。例えばジムをやるにしても、「本気で大会に出たい人」ばかり集めてもなかなか商売にはなりにくいでしょうしね。そういう本気な人たちもいながら、そこに憧れる普通のセミプロを掴まないといけないと。

倉橋
そうそう! まさにそんな感じです。
安田
ちなみに、どうすればセミプロにウケる店が作れるんですか?

倉橋
そうですね。例えば焼き鳥屋さんだったら、誰でも知っているネタがちゃんと網羅されていて、その中にあまり聞いたことのないメニューがいくつかある、というバランスですよね。通にしかわからないようなネタばかりだと、普通のお客さんは頼みづらいので(笑)。
安田
確かに(笑)。普通の焼き鳥がしっかり楽しめることが前提で、その上で、通の人が喜ぶようなメニューも置いている、と。

倉橋
そうそう。その店に行くことで、おいしい焼き鳥を食べるというニーズが満たされるだけじゃなく、珍しい部位をドキドキしながら食べたり、お店の人に鶏の知識を教えてもらったりと、食欲以外のワクワクを提供できることが重要なのかなと。
安田

なるほど。そうやって通う中で、セミプロがプロになっていくのかもしれませんね。


倉橋

ええ。その通りです。周りの人に「あそこの焼き鳥は一味違うよ」なんて言い出したりして(笑)。

安田
そういえば私、よくそんなことしてますね(笑)。

倉橋
確かにそうでしたね(笑)。よく美味しいお店を教えていただいて。
安田
そうそう。倉橋さんはいつも「美味しい!」と喜んでくれるので嬉しいんですよね。そう考えると確かに、通が唸るようなお店じゃなくて、初めての人もちゃんと楽しめるお店の方がよさそうです。

倉橋
まさに仰るとおりです。それがプロショップではなく「セミプロショップ」を目指す理由で。
安田
ははぁ、なるほど。ちなみにそのセオリーは、業態に関わらず当てはまるんでしょうか。

倉橋

ええ、どんな商品やサービスでも一緒だと思います。例えば美容院とかでも、有名人がたまに来るくらいなら嬉しいですけど、有名人ばかりだと行きづらいですよね(笑)。

安田
行きづらいです。程よくないですもん(笑)。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

Twitter  Facebook

株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に16店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから