第29回 社員は「辞める前提」で考える

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第29回 社員は「辞める前提」で考える

安田
「社員の定着率を上げるにはどうすればいいか」と相談を受けることがあるんです。でも最近、もしかしたら「定着」という言葉自体が幻なんじゃないかと思うようになりまして。

渡邉
ん? どういうことでしょう。
安田
結婚で例えるとわかりやすいと思うんです。私は離婚経験がありますが、渡邉さんはありませんよね。

渡邉

はい。今世ではないと願ってます(笑)。

安田
なるほど(笑)。ちなみに離婚する人としない人の違いは何だと思いますか?

渡邉
よく言われるのは、相性がいいとか愛し合っているとかですよね。
安田
それももちろんなんですが、結局は「お互いの努力」なんじゃないかと思うんですよ。「離婚しないための努力」をしている人だけが離婚せずにいるのではないかと。

渡邉
ああ、なるほど。確かに他人が生涯一緒に暮らし続けるのは、そんな簡単なことじゃないですから。
安田
よく男同士で「うちは全然平気だよ」なんて話している人がいますよね。でもあれは奥さんが我慢してるだけなんじゃないかと(笑)。

渡邉
旦那さんが気づいていないだけでね(笑)。子どもが巣立った後に、突然「別れましょう」と言われたり。
安田
熟年離婚でよくあるパターンですよね。結婚しているとしても、実は「まだ離婚していない」だけという。会社もそれと一緒だと思いませんか? 「既に辞めた社員」と「まだ辞めてない社員」がいるだけなんじゃないかと。

渡邉
ははぁ、なるほど。確かに「まだ転職先が見つかってないだけ」とか「まだ我慢の限界に達してないだけ」という人は多いかもしれませんね。
安田
そうなんですよ。だから会社は、「全ての社員がいずれ辞める」という前提で考えるべきなんです。その上で、一日でも長く働いてもらう努力をしなくてはいけない。
渡邉
それこそ結婚と同じで、「うちの社員は大丈夫」なんて高を括っていてはいけないよと。
安田
そういうことです。若い方なら転職先を探すのも比較的容易でしょうし、給料だけでは繋ぎ止めておけませんからね。

渡邉
昔は「給料を払っている」っていうだけで何だか偉い感じがしたんですけどね。封筒で現金を手渡しして「ははー!」みたいな(笑)。
安田
さすがにもうそんな時代じゃないですよ(笑)。給料を払うのは当たり前で、それだけでは愛社精神は育たない。

渡邉
そうですよね。弊社で長く働いてくれている社員を見ていると、「新しいことにチャレンジできる」とか、「面白い人と一緒に仕事ができる」という部分にメリットを感じてくれているようです。
安田
なるほど。そういう給料以外のメリットが必要なんでしょうね。

渡邉
辞めてほしくない人を役員に抜擢して、利害関係を一致させるケースもありますよね。
安田
そうですね。とはいえ役員になっても辞める人は辞めますから。私自身、突然辞表を出されたことが何度もあります。
渡邉
何度もですか(笑)。そう聞くと、「会社には社員に辞められないための努力が必要だ」という意見になるのも頷けます(笑)。
安田
笑。ところで、辞める社員を大勢見てきて思うのは、「辞める理由」に男女差があるということなんです。男性は「金銭的な理由」とか「学びたいことができた」とか、明確な理由があることが多い。

渡邉
ああ、僕自身も心当たりがあります。
安田
一方女性は、「ここにいる理由を感じられなくなったから辞める」というケースが多い印象なんですよ。

渡邉

なるほど、確かにそうかもしれない。そう考えると、「マネジメントを任せる」とか「役職を付ける」というような対応は、男性にこそ有効なんでしょうね。

安田

そう思います。もちろん男性でも「マネジメントなんてやりたくない」という人もいるので、結局は1人1人細かく見ていくしかないんですけど。かたや女性に対しては、「この会社にいる理由」を作り続けてあげないといけないので、より細やかな対応が必要になってくる。


渡邉
なるほどなぁ。いずれにせよ、社員を定着させるには相応の時間や手間がかかるということですね。しかも、そこまでしても辞めるときは辞めてしまうわけで。
安田
そうなんですよ。ですから、辞められること前提でどんどん人を採用するのは一つの方法だと思います。だいたい4~5年で全員が辞めるくらいの感覚で。

渡邉
もしくは業務を自動化して省人化するとか。ただどちらにしても、大手レベルの採用力や資金力がないと厳しいんじゃないですか?
安田

そうなんです。採用力も資金もない中小企業は、社員一人ひとりに向き合って「辞められないための努力」を続けるしかない。まぁそれでも、「この人は大丈夫だろう」と思っていた人に限って辞めていってしまうんですけど。

渡邉
ああ、確かに。ナンバー2がメンバーを引き連れて辞めてしまうこともありますからね。
安田

そうそう。給料も高くて、好きなこともやらせてもらっていた人なのに辞めてしまう。

渡邉
ある日突然、じゃなく、せめて辞めそうな気配を察知できたらいいんでしょうけど。
安田
いやぁ、難しいでしょうね。だからこそ辞めることを想定しておくのが大事なんだと思います。

 


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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