第23回 事務所こそ「庭付き一戸建て」の時代

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第23回 事務所こそ「庭付き一戸建て」の時代

安田
お庭というと一般的に住宅のイメージですが、direct nagomiさんでは住宅以外のお庭を作られることもあるんですか?

中島

そうですね。以前大工さんの事務所のお庭を作らせていただいたこともあります。外構部分を含めて、建物の周りをほとんどやらせていただきました。

安田

へぇ! 大工さんからお庭作りを依頼されるって、なんだかすごいですね。ちなみにこれは住宅兼事務所ではなく、完全に事務所用途の建物なんですか?


中島

ええ、工務店の事務所です。ただ、モデルハウスの役割も兼ねて建てられたようなので、確かに一見すると住宅のようですよね。

安田

ああ、そういうことなんですね。それにしても、こんなお庭のある事務所だったら、仕事に行くたびに癒されそうですね(笑)。これからはもうビルの一室で仕事をするという時代でもないですし、こういう素敵な環境で働くのもいいなぁ。


中島

本当にそうですよね。お庭を眺めながらお仕事をするって、すごく素敵です。まぁ、都心部ではなかなか難しいかもしれませんけれど。

安田
「事務所にお庭を作る」という発想、すごく気に入りました。働き方改革などの延長で、これから流行っていく気もします。ちなみにどういう経緯でご依頼があったものなんですか?

中島
元々僕の先輩の大工さんで、一度ご自宅のお庭を作らせていただいたんです。それを気に入ってくださって、事務所を建てる時もご依頼いただいた、という流れです。
安田
なるほど。そうやってリピートしてもらえるのは嬉しいですよね。私個人としては、学校や病院のお庭もぜひ中島さんに手掛けてほしいです。

中島

ああ、いいですねぇ。作らせていただけるならぜひやってみたいです。自然を取り入れた温かみのある雰囲気で作れたらいいなぁ。

安田

本当ですね。学校や病院って、どちらかというと無機質なイメージじゃないですか。四角いコンクリートに窓が付いているだけ、というような。まるで「殺風景にしなければいけない」というルールでもあるのかというくらい(笑)。


中島
確かにそうですね(笑)。特に日本はその傾向が強いと感じます。海外だともう少し人間らしいというか、ぬくもりを感じさせる所が多いですよね。
安田

本当にそう思います。アメリカの病院も、落ち着けるデザインの所が多かった気がします。中に入ったらいい匂いがしたりとか。日本の学校や病院もそうなってくれるといいんですけど。ああ、そういう意味では以前お話を伺った治療院さんはすごく素敵ですよね。


中島

ありがとうございます。ああいうお庭がある施設が増えていけば、街全体の雰囲気も変わっていくように思います。患者さんや生徒さんも気分よく通えますしね。

安田
便利さやコスパを求めるだけじゃなく、心に響くかどうかという点を重視してほしいですね。もちろん、あまりに不便でも困るわけですけど。

中島
そうですね。バランスが大事だと思います。たとえば飲食店さんでも、ただただ目立つ看板を掲げるのではなく、「あのお店の庭、素敵だね」という風に目立ってもいいと思うんです。それで、その庭を見ながらゆっくり食事してもらえたら。
安田
確かにそうですね! そんなお店だったら多少価格が高くても通いたくなっちゃいます。……と、こういう話をしていて思い出しましたが、私も昔、飲食店の内装業者さんにお願いしてオフィスをカッコよく作ってもらったことがありました。

中島

なるほど、飲食店の業者さんは独自の技術をたくさん持ってますからね。今でこそオフィスを作り込む会社も増えてきましたけど、当時は珍しかったんじゃないですか?

安田
ええ。すごく話題になってメディアにも取り上げられました。当時は「オフィスは機能的であればあるほどいい」という時代でしたから。

中島
ゆったりと食事するための飲食店とは、真逆の考え方ですよね。
安田
当時の私がもし中島さんと出会っていたら、絶対に一軒家をオフィスにして庭を作っていただろうなと思います(笑)。

対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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