第30回 トップダウン経営のための情報開示と権限移譲

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国18店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第30回 トップダウン経営のための情報開示と権限移譲

安田

前回のお話で、万代さんでは「その月に何にお金を使ったか」を会議で開示すると聞きました。それって具体的にどこまで話すんですか? 例えば接待交際費なども全部オープンにするんでしょうか。


倉橋

ええ、お金の出入りはすべて会計データ上で見れるようにしています。だから接待交際費もそうですし、出張でいくら使ったかとか、どんな備品を買ったのかとか、経費に関しては全てオープンですね。

安田

へぇ〜、ということは、もしかして倉橋さんや幹部役員の収入もわかるんですか?


倉橋
ああ、わかりますね。会議で報告する1ヶ月の支出の中に、僕の給料も含まれているので。
安田

そうなんですか! そこまで開示されている会社ってまだまだ少ないですよね。


倉橋
そうでしょうね。でも個人的には、そこをブラックボックスにするからよくないんだと思うんですよね。社員たちも疑心暗鬼になりがちというか。
安田
なるほどなぁ。でも「ちょっとこれはさすがに見せられないな」みたいなことってありません? 友達と高い店で飲みすぎてしまったり。

倉橋

いや、もう一切ないですね(笑)。仕事かプライベートかは厳しく分けてますし、その分しっかり給料はもらっているので。万が一飲みすぎてしまったとしても、ちゃんと正直に計上します(笑)。

安田

へぇ。でもどこまでが仕事でどこまでがプライベートかって、社長の場合は難しいですよね。社長同士で友達付き合いしている中で仕事が生まれたりもしますし。その辺はどういう風にジャッジするんですか?


倉橋

確かにそういうケースもありますよね。個人的には「ビジネスにプラスになるかどうか」という判断基準を持ってます。まぁ、社長同士で飲んでいて仕事の話をしないなんてあまりないですけどね。実際僕が安田さんとお会いする時も、ほとんど仕事の話しかしませんし(笑)。

安田
まぁそうですね(笑)。ちなみに倉橋さんがそうやってきっちり線引きしていることを、社員の方は知ってるんですか?

倉橋

どうでしょうね。あまり積極的には伝えていなかったかもしれません。「とにかく会計をオープンにしよう」と思うばかりで。

安田

それは伝えた方がいいんじゃないですか。絶対社長はお金使い放題だと思ってますよ(笑)。


倉橋
なるほど、参考にさせていただきます(笑)。でも、僕はそもそも無駄なことにお金を使おうとは思わないですからね。社員たちが頑張って作ってくれたお金を、社長が変なものに使っていたら会社は伸びないし。
安田
そりゃそうですけど、なかなかその意思を貫けない人が多いんじゃないですかね。ちなみに1人で食事に行く時もプライベートなんですか。「食事をしながら仕事のことを考えてたんだ」みたいに言い訳しようと思えばできますけど(笑)。

倉橋
それは僕の中では完全にプライベートですね(笑)。
安田

なるほど。線引きがしっかりあるんですね。ここまでのお話で「情報開示」についてはかなりの部分まで行っているのはわかったんですが、もう一つ聞きたいことがあって。それが「権限委譲」についてです。


倉橋
ああ、なるほど。それはそれで重要な部分ですよね。
安田

ええ。「どこまでを社員に任せるか」で意見が分かれるところだと思うんですが。


倉橋
う~ん、すごく難しいところですよね。一つ言えるのは、何でもかんでも移譲すればいいってものじゃないということです。ビジネスはやっぱり、社長のトップダウンが強く発揮できないと前に進んでいかないので。
安田
とはいえ現場に任せる部分もないと大きくなっていかない。

倉橋
ええ。ですから、ある程度の権限移譲は必要だと思います。ウチでも採用や仕入れなど、現場の裁量で判断してもらっている部分はたくさんあります。それでも、トップダウンとのバランスは常に気をつけていますね。
安田
ああ、なるほど。トップダウンに納得感を持ってもらうためにも、日頃からさまざまな情報をオープンにされているわけですね。
倉橋

仰るとおりです。そうやってバランスを取りながら、継続的に収益の上がる組織を作ることが経営者の仕事だと思っています。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に18店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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