第221回 記憶力と商売の関係性

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

先月、休みの日に子供たちと過ごしていた時のこと。

日に日に様々な情報を覚えていく子供たちを見て、私はこんな事を口にしていました。
「子供の記憶力ってすごいよなぁ」と。

この言葉を口にしたことがあるのは私だけではないと思いますし、脳の発達する速度から考えても記憶力が増しているのは事実なのでしょう。

ただ、その時はあまり気にならなかったものの、後々この「子供の記憶力はすごい」という言葉を発した自分に対して何かひっかかる違和感を感じたのです。


私が発した「子供の記憶力はすごい」という言葉に対する違和感。
それは、自分の記憶力の低下を正当化するために発した言葉なのではないかということ。

「子供の記憶力がすごいのは若いからだ。だから大人になってしまった自分の記憶力が劣っていくのは仕方がない」という自分に対する言い訳のようなもの。

記憶力の低下と年齢を関連付けて考えているのは私だけではないでしょう。
確かに私自身、年齢的に考えて記憶力が増していくことはないだろうと理解している一方で、自身の経験を振り返ってみると、こうも感じるのです。

「今の年齢でも自分が興味のあることに関しては記憶するのが速いよな」と。

そう考えると、記憶力とは年齢が影響しているのは確かであるものの、それと同時に、物事に対して自分がどれほど興味を持っているのかという「興味の強さ」も影響しているように思えるのです。

つまり、記憶力の低下を感じる要因の一つは、物事に対する興味や好奇心を失っていることではないかということ。

年齢が上がるにつれて私たちには経験が増えていきます。経験が増えていくこと自体は良いことだと思っていますが、逆に無意識のうちに自分の経験値の中だけで物事を進めようとしてしまい、新しいことに対して興味や好奇心を持ちづらくなるというマイナスの面もあるような気がします。

そして、これは商売でも同じことが言えると思うのです。

どんな業種であれ、新しい情報を取り入れなくなった商売は時代に適応できなくなり、時代に取り残された結果、その商売は継続自体が難しくなってしまうでしょう。

じゃあ、時代に適応していくために必要なものが何なのかと考えると、その答えこそが常に新しい情報を取り入れていく興味や好奇心なのではないでしょうか。

「子供の記憶力はすごい」

この言葉に間違いはないと思いますが、記憶力の低下を年齢のせいだけにして、新しい情報を吸収していく興味や好奇心を失っていくことが商売の衰退が始まるサインなのかも知れないと、子供たちの言動から学んだ気がしたのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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