第94回 非効率という強み

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

2002年の創業から19年で30店舗。
これは大手チェーンと比べれば遅い出店スピードと言えます。

「もっと出店数を増やすことはできなかったのか?」と今から振り返って考えてみると、それが可能な選択肢もどこかにあったのかも知れません。

ただ、同時にこうも思うのです。
「果たして出店を急いでいたら、私のお店は今も存続できていたのだろうか?」と。


出店スピードを上げるために必要なこと。
それは「一気に店舗展開が可能なモデルを考えること」ではないでしょうか?

画一化された店内。
誰でもすぐに働ける、人に依存しないオペレーション。
商材を統一することで得られる価格競争力。

確かにこれはとても効率の良い考え方と言えますし、比較的短期での儲けを増やすには正しい選択なのかも知れません。

ただ、この考え方には問題点もあると私は思うのです。

その問題点というのが、この戦い方は大手の得意分野であるということ。
たとえ短期的に儲けを増やせたとしても、中長期で商売を考えるのであれば、この戦い方ではいずれ大手との競争に巻き込まれ、負ける可能性が高いということ。

じゃあ、競争に巻き込まれずに商売をするためにはどうするべきなのか?

この問いに対する私の考えこそが、「店舗展開が容易なモデル」を考えようとするのではなく、むしろ「店舗展開が困難なモデル」を考えることであり、展開が困難だからこそ他社との競争に巻き込まれずに商売ができると思うのです。

冒頭で私は「出店を急いでいたら、存続できていたのか?」と書きました。
この問いに対する答えは分かりません。

ただ少なからず思うのは、私が現在まで商売を続ける事ができた要因の1つは、大手とは異なる店舗展開が困難な「非効率」を選択したからだということ。

大手が効率化を強みにするならば、私たち小規模経営は非効率を強みにする。
効率の悪さとは捨てるべきものではなく、むしろ小規模店が決して手放してはいけない強みであり、その中にこそ大手が真似できない「味のあるお店」になる要素が含まれているのだと私は思います。

 

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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