第34回 「上司の好き嫌い」は評価じゃない。

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国18店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第34回 「上司の好き嫌い」は評価じゃない。

安田

万代さんでは最近評価制度を作り変えたと仰ってましたよね。どう変わったんですか?


倉橋

変えたと言うか、キチンとした評価制度がなかっただけでして(笑)。これまでは属人的な評価、つまり上司の好き嫌いで評価が決まってしまうような状態だったんです。

安田

ああ、なるほど。そうなるとだんだん上司の顔色しか見なくなっちゃうんですよね。


倉橋
本当にそうなんです。本来は上司じゃなくお客様に喜んでもらうことを考えなければならないのに……。それで「これはちゃんとした制度を作らないと」ということで、業務内容の棚卸しから始めて。
安田

きちんとした評価制度を作るためには、誰がどんな仕事をしているのか、明確になっていないといけませんもんね。


倉橋
ええ。一つ一つの業務に対して「どういう作業にどれくらい時間を使っているのか」を徹底的に見ていって。その上で細かい評価基準を設けていきました。
安田
業績に直接関わる部署は設定しやすいと思うんですが、本社機能のような数値化しにくい部署もありますよね。その場合はどう設定したんですか?

倉橋

間接部門についてもできる限り数値化しましたね。例えば経理だったら、「月末で締めて2営業日以内に試算表を出す」とか。

安田

ははぁ、なるほど。ちなみに評価項目はいくつあるんですか? 経理一つとっても、試算表だけじゃなく請求書とか給与計算とか、担当タスクは無数にあると思うんですけど。


倉橋

どの部署も10項目ぐらいですが、その中でも優先順位を決めていて。経理の仕事でいうと、一番重要なのは「経営陣に対してタイムリーに数字を伝えること」だと思うんです。それにかかる日数が少なければ少ないほど、次に何に投資するかをいち早く決められるので。

安田
ああ、なるほど。何が一番重要かを決めて、それに沿って評価ポイントの優先度を決めていくわけですね。とはいえ、スピードを優先すると正確さが損なわれてしまいませんか? 急ぐあまりに試算表の数字に間違いが発生する、みたいな。

倉橋

その可能性はゼロではないと思いますが、正確性を重視するあまり、いつまでも数字の見直しをしていたら仕事になりませんから。そういうわけで、期限も含めて評価基準を数値化するようにしました。

安田

確かに数値で表現すれば、属人性はなくなりますもんね。でも、店舗の環境整備とか接客のような分野も数値化できますか?


倉橋
それもできる限り数値化しています。例えば環境整備だったら「トイレがきれいだったら何点」とか、接客だったら「笑顔で接客した回数」「お客さんに挨拶した回数」など、さまざまな項目で点数を付けているんです。
安田
へぇ。一つ一つ細かく見ているんですね。それは誰がチェックするんですか?

倉橋
そういうのを専門でやってくださっている会社があって。そちらにお願いしています。
安田

なんだか覆面調査みたいですね(笑)。でも確かに、社内の人間がやるより公平性がありそうです。


倉橋
まさにそういう狙いで外部に委託しています。上司は上司で、部下の点数が1点でも上がるように頑張ればいいわけで、すごくわかりやすい。
安田

ほう、なるほど。つまり上司の評価基準は部下の点数を上げられているかどうかだと。


倉橋
ええ。すごくシンプルだし、それで自分の報酬もアップするのだから、部下のために全力でがんばりますよね。
安田
なるほどなぁ。ちなみに、「仕事に対する姿勢」のような部分はどう評価してるんですか? 成長意欲とか自立心とか、なかなか数値化しにくいと思うんですが。

倉橋
その辺りは「自分で設定した目標に対しての達成度」で評価しています。割合でいうと、評価項目の中で15%くらいですけど。
安田
全体からすると少なめなんですね。つまり「取り組む姿勢」よりも「結果」を重視しているということなんでしょうか。
倉橋
そうですね。プロセスよりは結果を見ます。抽象的なもので評価していると、冒頭でお話したような「好き嫌いの評価」が出てしまいがちなので。
安田
確かに。だからこそ85%の部分は誰が見てもわかるような評価基準にしていると。
倉橋
そういうことです。結局僕らの仕事って、突き詰めれば「お客様にお買い物をしてもらって、かつリピートしてもらうにはどうしたらいいか」を考え続けることなんです。そこに集中できるような評価制度を目指しました。
安田
極論をいえば、「お客さんに人気があって、その人のいる店が売上やリピート率が高かったら、たとえ上司の評価が低くても出世ができる」っていうことですよね。
倉橋

かなり極論ですが、そういうことになりますね。なんだか僕自身が安田さんに棚卸をされてる気がします(笑)。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に18店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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