第32回 「つくばい」や「筧」もオリジナルで

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第32回 「つくばい」や「筧」もオリジナルで

安田

direct nagomiさんのホームページを見ていると、石の照明やオブジェなどいろいろとオリジナルで作られてますよね。石のつくばいというのも見かけたんですが、そもそも「つくばい」って何ですか?


中島

つくばい」というのは手水鉢(ちょうずばち)ですね。手を洗うための水が入っている鉢です。

安田

ああ、茶室のある庭園などによくありますよね。あれは石の加工業者さんに頼んで作っているんですか?


中島
茨城の会社の社長が中国で作ったものを分けてもらっています。でもここ最近中国の石材も高くなってしまったので、今後は使うのが難しいかもしれないですね。
安田

ああ、以前も中国産の石の値段が上がっていると仰ってましたもんね。


中島

そうなんです。ですから最近は、国内の専門店で仕入れることも多くなりました。

安田
なるほど。ちなみに石の世界も、ワインのように年数が経ったものの方が高かったりするんですか?

中島
古いものの方が高いこともありますね。もちろん状態が良いことが前提ですけれど。あとはどこで採れた石かによっても全然値段が変わってきます。
安田
へえ! 産地でも変わってくるんですね。

中島

そうなんです。なかなか奥の深い世界で(笑)。

安田

オリジナルと言えば、石のほかにも陶器の照明なんかも作られているんでしたっけ。たしか陶器屋さんにお願いして作ってもらったと仰っていましたけど。


中島
ええ。その都度お庭のイメージを伝えてデザインしていただいています。
安田

つまり完全なオーダーメイドなわけですね。そうすると、うっかり蹴っ飛ばして割ってしまったら、もう二度と同じものは作れないわけだ(笑)。


中島

笑。確かに全く同じものは難しいですが、近い形のものは作ることはできると思いますよ。

安田

それはよかった(笑)。ところでこういう陶器の照明って、モダンな家にも合いそうですよね。


中島
そうなんですよ。石だとどうしても和のイメージが強くなっちゃうんですが、陶器はそうでもないので。最近流行っている和風でも洋風でもないデザインのお家には、陶器がよく合うと思います。
安田
そうですよね。照明の他にもいろいろ作られているんですか?

中島

一輪挿しやつくばいの代わりになるお皿のようなものも作っています。あとは陶器以外でも、「筧(カケヒ)」という、手水鉢に水が流れる部分をステンレスで作ったり

安田

ほう。ステンレスで。水が流れる部分というと、鹿威しみたいなものですか。


中島
それでいうと「カコーン」と音がなるのが鹿威しで、筧はただ水が流れるものですね。いずれも昔から竹を使うのが一般的だったんですが、常に水が流れているので、どうしても2~3年で朽ちてしまうんです。
安田
ああ、なるほど。そういう違いがあるんですね。確かにステンレスなら腐らないでしょうし、メンテナンスの手間もかからなさそうですね。

中島
そうなんです。見た目もステンレスの方がモダンな雰囲気になるので、最近はほとんどステンレスで作っています。
安田
確かに3年ごとに毎回付け替えるわけにもいかないですからね。逆に言えば、昔ながらの竹の筧を使っている日本庭園は、頻繁に付け替えてるわけですか。

中島

ええ。2~3年に1回は替えていると思います。

安田

そうなんですか。いやぁ、きれいなお庭を維持するのも大変なんですね。


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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