この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
安田
男性の育児休暇取得がルール化されていくという話でしたよね。
久野
従業員100人超えの会社に目標設定が義務化されます。
安田
久野
男女ともに育休を取るのが当たり前になっていくと思います。
安田
国民年金に「第3号が必要なのか」と言われ始めました。そもそも第3号って何ですか?
久野
第3号というのは第2号被保険者に扶養されている配偶者の方ですね。
安田
保険料は払ってないけど年金がもらえるわけですよね。これによって「女性が働く機会を失わせている」と言われていまして。
久野
安田
その壁を超えて働かざるを得ない人もいっぱいいるわけですが。
久野
そう思います。だから男性の育休にも力を入れ出したわけで。
安田
でも育児で現場を離れると元の仕事に戻るのが難しいみたいですよ。
久野
元の仕事に戻れない女性が多いのが現状です。男性が休むことで奥さんもずっと休まずに済みます。お互いが仕事を失わずにキャリアを積み重ねていける。
安田
なるほど。どちらかのキャリアに頼るのは危険ですからね。何かあった時のために二人がキャリアを持ち続ける方が絶対にいい。
久野
はい。女性の社会進出はいいことだと思います。ただ日本は賃金格差の問題もあって。
安田
賃金格差が生まれる一番のきっかけが出産みたいです。出産で何年か休んだ結果ガクンと収入が下がってしまう。
久野
安田
男性と同じくらい稼いでいる女性は独身の人が多いそうです。これからは男性も家事や育児をやって奥さんのキャリアを止めないようにしないと。
久野
出産は代わりにできないので、そのぶん子育てや家事を頑張らないといけないです。
安田
日本人男性はそういう生活に慣れてないから大変でしょうね。
久野
子育ては大変ですからね。私も仕事に逃げてます(笑)
安田
もう逃げられない時代ですよ。家事をちょっと手伝ったくらいでは成り立たない。家事も育児も折半するのが当たり前になりますよ。
久野
日本は年金も含めて「男性が働いて女性が家にいる」というモデルだったので。全て壊さないといけないでしょうね。
安田
これからは夫婦で稼ぐ家庭がマジョリティになるでしょうね。
久野
安田
「ひたすら仕事だけ」という男も減ってきていますし。ワークライフバランスを取りながら二人でそこそこ稼ぐスタイルでしょうか。
久野
どこでバランスを取るかですね。日本で子育てするにはある程度の収入も必要ですし。
安田
500万ずつ稼ぐのが理想じゃないですか。二人合わせたら1000万になる。
久野
二人とも大企業なら稼げるでしょうけど。中小企業には400万の壁があります。
安田
久野
そうですね。ただ、そうなるためには男性の育休をもっと取らせないと。
安田
久野
安田
久野
女性は産後56日間休まなきゃいけないルールです。男性もそういうルールを作るしかない。
安田
女性だけが休むとキャリアがそこで終わってしまいますよね。1年ぐらい休んじゃうと元のキャリアに戻るのが難しいそうです。
久野
中小企業では難しいですね。中小企業にはそういう柔軟性がないんですよ。
安田
久野
中小企業は人にめちゃくちゃ依存しているので。半年も休まれるともう仕事が回らない。だから別の人を入れざるを得ないんです。
安田
なるほど。別の人を入れちゃうと戻ってくる場所がなくなると。
久野
安田
久野
二人入れるお金もないし、そもそも休む前提でビジネスを組み立てていないんです。
安田
とはいえ中小企業でも男性の育休は義務化されるんですよね?
久野
されると思います。男性の育休が強制化されたら、中途半端なサイズの会社はもう生き残れなくなります。
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安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。