庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第37回 雨が降ると池が現れる庭
前回、「6軒分のお庭を街並みごと作る計画」が完成したとお聞きしました。事例も見せていただきましたが、すごくいいですね!
ありがとうございます。いがみ建築工房さんという、岐阜県各務原市を拠点に家作りをされている会社さんからお声がけいただきまして。
元々そういう事業を得意とされている建築屋さんなんですか?
いえ、今回が初の試みです。最初は1棟のみで考えていたそうですが、どんなに素敵な家を作っても、周りの景色とのバランスで見え方が変わってしまう。それならば街並み全体をデザインしてしまえばいいじゃないか、と思い至ったと聞いています。
なるほど。「いい家」を追及する中で、「6棟まとめて建ててみよう!」となったんですね。
そうなんです。私自身も「1軒のお庭でできることには限界があるな」と感じていたところだったので、すごく共感して。ぜひご一緒させてくださいとお願いしたんです。
いえ、建物と庭を同時に進めてました。スケジュールの問題もありますから。
そうか。6軒もあるから、どんどん作っていかないと終わらないわけですね。ちなみに作りとしては、マンションのように6棟それぞれの土地があって、それとは別に共有部分があるイメージでしょうか。
ほう! 雨が降った時だけ池が出現するんですか。おもしろいですねぇ。でもなんでそんなものを作ったんですか?
元々の土地が、奥に向かって坂道を下るような感じだったんですね。突き当りに畑があるんですが、そこに水が流れるのを防ぎたいというご要望があって。
ははぁ、なるほど。それをどう処理するかを考える必要があったわけですね。
まさにそういうことです。ちなみに僕がこのプロジェクトに参加させていただいたのが、ちょうど「排水をどうしようか」という課題が持ち上がっていたタイミングで。「池を作るのはどうでしょう」と提案させていただきました。
へぇ、それはすごい。でも面白いですね。排水のためだけなら、単に穴を掘っておけばいいようにも思いますが、それでは味気ないから池にして景観をデザインしたわけでしょう?
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。