第12回 宝石はどこまでが新品なのか

この対談について

母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。

第12回 宝石はどこまでが新品なのか

安田

今回はダイヤについて聞いてみたいんです。都市伝説的な話になってしまうかもしれないんですが……


望月

えっ、何でしょう(笑)?

安田

「実はダイヤモンドは山ほど採れているんだけど、大手のダイヤモンド採掘業者が流通量をコントロールして価格を上げている」という話を聞いたことがあるんです。つまり相場なんてあってないようなものだと。


望月

ああ、なるほど。それで言うと、僕も宝石業界に入って30年くらいになりますけど、正直本当のところはわからないんです。とはいえ、いくつかの会社によって価格が調整されているのは確かだと思いますね。

安田

やっぱりそうなんですね! じゃあどこかで価値が暴落するかもしれないわけですか。


望月

うーん、どうでしょう。僕が業界に入ってからは暴落したという話は聞いたことがないですね。最近はお客様から「こういうグレードのダイヤを探してほしい」とご注文いただいて探すと、ほぼ見つかるんです。つまり決して品薄じゃない。そういう中でも価値は下がっていませんし、むしろ高くなっています。

安田

ふーむ、そうなんですね。ちなみにそうやって探して仕入れた宝石って「新品」なんですか?


望月

ああ、実はジュエリーって、「何をもって新品とするか」はすごく曖昧なんです。ダイヤモンド専門の業者から仕入れたものは新品として扱ってはいますが、それが本当に誰の手にもわたっていないかは確かめようがない。そういう意味では、巡り巡って中古のものが新品として売られているケースもあると思います。

安田

ははぁ、なるほど。特にダイヤモンドなんて、傷もつかないわけだから、判別しようがないですもんね。ダイヤ以外だと傷が入っていたりしてわかるものなんですか?


望月

いや、ダイヤ以外も、表面をきれいに研磨すればわからないでしょうね。

安田

そう考えたら確かに「何を持って新品とするか」はめちゃくちゃ難しいですね。金属部分だって、溶かしてまた作り直すこともできるわけで。


望月

ええ。そういうわけで新品中古の定義が非常に曖昧なんです。

安田

なるほどなぁ。ちなみに最近よく「空き家問題」の話をするんですが、家の場合は新築か中古かが明確なんですよね。そして中古になれば当たり前に価値が下がる。でも宝飾品は年数が経ったからといって価値が下がるわけではないですよね。金(きん)もこの10年で何倍にも上がってますし。


望月

金は今とんでもないことになってますからね。10倍くらいになってるんじゃないかな。

安田

そうそう。うちの奥さんが若い頃に買った金のネックレスを売らずに置いておいたら、買った時よりもはるかに高い金額になってて驚いていました。日本は特に今円安だし、円で貯金するよりは金で持ってる方がいいとよく聞きますが、同じように宝石を資産として持っているのもありなんですかね。


望月

うーん、どうでしょう。確かに今のところ価格は維持されていますが、それが資産になるかというと……。例えばダイヤでも「世界に数個しかない希少なものを持っている」という以外の価値はあまりないのが実情で。

安田

え、そうなんですか? それはつまり、売ろうとしても大した額で買い取ってもらえないってことなんですかね。


望月

一応ダイヤにもグレードによって相場はあるんです。でも我々業者の流通経路以外で売ってしまうと、どうしても安くなってしまうんですよ。

安田

ああ、なるほどなぁ。素人が簡単に売れるものではないと。ちょっと話を戻しますが、新品か中古かっていうのはプロでも見分けがつかないわけですか。


望月

そうですね、つかないです(笑)。それまで何人もの方が使用していても、巡り巡って専門業者の手にわたり、そこで鑑別書を作れば、もうそれは「新品」です(笑)。

安田

なんと(笑)。ということは、世界中の宝石屋さんに置かれている新品のジュエリーは、もしかしたら半分くらいは中古かもしれないってことですか(笑)。

望月

あり得るかもしれません(笑)。鉱山で採掘されてカットされてすぐのものだけが流通しているわけではないので。むしろそちらの方が少ないくらいで。

安田

つまり原石をカットして初めて作られたものかどうかは、宝石商でもわからないと。なんというか、ものすごく不思議なマーケットだなぁ(笑)。都市伝説よりすごいかもしれない。

望月

そう言われるとそうですね。「事実は小説よりも奇なり」を地で行っている業界なのかも(笑)。

安田

笑。望月さんのお話を聞いていると、下手に安く売ってしまうよりは、リフォームしていい状態で持っている方がいい気がしてきますね。

望月

同感です。だから僕たちも、商売抜きで「いいものを持っていた方がいいですよ」とお勧めするんです。その方が将来的にお子さんやお孫さんの代までずっと受け継がれますから。本当にいい石だとリフォームした後の仕上がりも素晴らしいですし。

安田

ああ、なるほど。どうせならずっと大事にしてほしいですもんね。いや〜、宝石は奥が深いですね。


対談している二人

望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表

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25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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