第277回 インバウンド1億人の世界

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第277回「インバウンド1億人の世界」


安田

びっくりする話ですが、都内のカプセルホテルがついに1万2000円になったそうです。

久野

1泊ですよね?やばいです。

安田

インバウンドの影響だと思います。カプセルホテルでさえこの値段。普通の日本人はもう都内には宿泊できません。

久野

出張も日帰りで行くしかないですね。

安田

この先もインバウンドは増えるでしょうし、円安の終わりも見えないし。

久野

ホテルに限らず、日本人はもう自国の高いサービスを受けられなくなります。

安田

高級ホテルに日本人は泊まれないし、高級レストランにも行けない。行けるのは観光客だけ。

久野

そうなりつつあります。

安田

北海道のニセコはもうそうなっていますよね。価格設定が完全に外国人向けで。旅行で訪れた日本人には食事も宿泊もできない価格になってます。

久野

日本人はみんな働く側ですね。アルバイトでもかなり高い時給設定がされていて。ラーメン1杯4000円とかするそうです。

安田

こういう地域がどんどん増えていくんでしょうか。

久野

そう思います。日本人は高いものを買ってくれないので。

安田

円安で海外旅行に行くのも大変みたいです。ハワイ旅行にお米を持っていくそうですよ。向こうで自炊するってことですよね。

久野

スーツケースにお米を入れていくんですか?ちょっと悲しいですね。

安田

出稼ぎに来ている東南アジア人を「貧乏な人たち」として見てきましたけど。自分たちがそういう立場になってきた。

久野

そうなんですよ。早くこの現実を受け入れないと。

安田

久しぶりに六本木のBARに行ったんですけど、お客さんの8割は外国人でした。いつの間にかバーテンダーが英語ペラペラになっていて。「毎日これなんで」って言ってました。

久野

えー!すごい。

安田

普通の日本人はもうBARに行かない、というか行けないでしょうね。家なら数百円で飲めるお酒に何千円も払えないですよ。

久野

私はあまりお酒を飲まないですけど。あの空間ってお金を払うだけの価値があると思いますよ。

安田

私もBARは大好きなんですけど。高級なオーセンティックBARはもう日本人が行く施設ではなくなってる感じですね。

久野

それはまずいですね。

安田

まずいです。文化的な体験からどんどん日本人が取り残されていく。

久野

ウチの会社の規定も東京出張の宿泊費は1万円がベースだったと思います。もうそれじゃ泊まれないですね。

安田

カプセルホテルにも泊まれないですよ。

久野

もう完全に変わりましたね。時代が。

安田

名古屋もそうでしょ?インバウンドの外国人さんが多くないですか。

久野

外国人は多いですね。でもまだ東京に比べるとマシだと思います。

安田

大阪もすごいですよ。道頓堀なんてもう外国人だらけ。アーケードに人が多すぎて歩けないんです。いま車道を埋め立てて大きな歩道を作ってますよ。

久野

インバウンドの人は徒歩ですもんね。

安田

そうなんです。車を運転している日本人より歩いているインバウンドが優先。もう道頓堀も日本人が行く場所じゃなくなりつつあります。高い店が潤っていて。

久野

宿泊も東京並みになっていくんでしょうね。

安田

大阪もすごい勢いでホテルが増えてます。

久野

東京みたいに1泊10万以上のホテルも出てくるんじゃないですか。海外の富裕層は10万円以下のホテルには泊まらないらしいですから。

安田

飲食店もどんどん高級化&高価格化していくんでしょうね。

久野

もともと日本の飲食店はサービスの質が高いんですよ。それに見合わない安い価格だったというだけで。

安田

確かに。日本人の客はケチな上にサービスにもうるさいから。

久野

サービスの割に安すぎたんです。高くなったほうがいいと思う。

安田

この流れはどこまで続くんでしょう?インバウンドが1億人を超える日が来るとか。

久野

国家戦略としてそこは狙ってますね。本当に日本人が泊まる場所がなくなりますよ。

安田

日本人は海外旅行にお米を持っていかないといけない。国内旅行もテントとか(笑)

久野

冗談ではなく本当にそうなりますよ。東京出張でも千葉や埼玉に泊まるしかない。

安田

日本は「ものづくり」で復活するより観光に舵を切ったほうがいいんでしょうか。

久野

もう舵を切っていると思います。製造業では無理だと思ってるでしょうね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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