第8回 「お荷物事業」が一気に黒字化したカギは「多幸感」

この対談について

大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。​​創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。

第8回 「お荷物事業」が一気に黒字化したカギは「多幸感」

安田

今でこそ15店舗も展開する『電材買取センター』ですが、かつては年間3600万円もの純損失を出す赤字事業だったわけですよね。そこからどうやってここまで成長させたのか、すごく興味があります。


藤村

そうですね。シンプルに言えば、「お客様を喜ばせること」を最優先にしたところがターニングポイントだったと思います。

安田

ふーむ。具体的に言うと、何をどう変えたんですか?


藤村

逆じゃないかって言われそうなんですけど、まず商品を値上げしたんですよ。というのもね、僕はそれまで「安さこそお客様の求めていること」「安ければお客様は来る」と思っていたんです。でもどれだけ安くしてもお客様は全然増えない。じゃあこの考えが間違っているのかなって思ったんです。

安田

ふーむ? でも、かといって「高いこと」を求めているわけでもない気がしますけど。


藤村

ええ。だから単に値上げして終わり、じゃなくて、そのぶんお客様に還元しよう! と。例えばね、ガチャガチャのイベントをするわけです。お店で1万円買い物したら、1回ガチャガチャを回せる。10万円買ったら10回回せる、というルールにする。

安田

確かにイベントは集客に効果的かもしれませんけど、それがそんなに大きな変化なんですか?


藤村

うふふ。イベントというより、ガチャガチャというのがポイントで。というのも、ある大学の先生が「ガチャガチャは多幸感がある」って仰っていたんです。ガチャガチャをやっている時の脳は、ギャンブルをやっている時と同じ状態なんだと。そして僕は気付くわけです。「そうか、ウチに足りなかったのは多幸感なんだ!」と。

安田

なるほど! つまり「安さ」から「多幸感」を提供する店に鞍替えしたってことですね! 確かにガチャガチャって、ハズレが出てもむしろ燃えますもんね。「次こそはアタリが出るはずだ!」って(笑)。


藤村

そうそう、中毒性があるんです(笑)。だから全部のお店でガチャガチャをやるようにしました。

安田

いや〜観点が独特で面白いなぁ。ちなみに景品はどんなものを入れていたんですか?


藤村

店の中のありとあらゆる商品、全部です。60インチのテレビとか現金1万円とか、変わり種だと「寸切り棒」っていう1メートルくらいある鉄の棒とか。

安田

鉄の棒! そんなものエアコン工事に必要ないですよね? いらないって怒られなかったんですか?(笑)


藤村

それも想定済みなんです。「こんなん、いらんわ!」となったら「ほな、買い取ります」と言うんです。すると当然「え、ほんま? いくらで?」ってなりますよね。で、そこで「6000円で買い取らせていただきます」と。

安田

1万円の買い物をしてガチャを回し、出てきた景品を6000円で買い取ってもらえる…なんかすごく得した感じです(笑)。


藤村

でしょ?(笑) 実はこれには別の狙いもあって。それが、お客様に「買取体験」をしていただくことだったんです。

安田

なるほど! お客さんに「商品を売る体験」をさせてあげたんですね。


藤村

ええ。1度も体験したことがないことって、敷居が高いだろうなと思っていたので。だからガチャガチャをキッカケに「思ったより簡単に売れる」という体験をしていただくことで、どんどん商品を売りにきていただこうと。

安田

ははぁ…よく考えられた作戦だったわけですね。すごいなぁ。ちなみにガチャガチャ以外にはどんな仕組みを考えたんですか?


藤村

お客様やご家族の節目のイベントの時にお花をお送りしたり、お礼状をお送りしたり。あとは全店にコーヒーカウンターを設置しているので、そこでアイスクリームやコーヒーやホットドックなんかを無料でご提供したりもしてましたね。

安田

へぇ〜、「買取センター」なのに、無料で飲食ができるようにしたと。その心は?


藤村

お客様にはコーヒーでも飲みながらスタッフと気軽にコミュニケーションをとっていただきたかったんですよ。そうすれば何気ない会話の中から顧客データを収集していけるな、と。

安田

う〜む、さすがですねぇ。さらに言えば、顔なじみのスタッフができれば通いたくなる。結果、リピーター化していくと。


藤村

仰るとおりです。で、そうやって常連になっていただいた方には、いろんな工具も全部無料で貸し出しするんですよ。工具って10万円とか20万円するような高価なものが多いので、零細の職人さんには特にありがたがられるんです。

安田

でも、そんなにあれもこれも無料にして、ちゃんと商売になるんですか?


藤村

うーん、正直なところ儲けのことは考えていませんでした(笑)。とにかく「お客様に喜んでもらうこと」に全振り。で、そういう努力を積み重ねていったら「あの店、いろいろ親切にしてくれるで」って口コミがだんだん広まって。それで商品を売りに来てくれる方がどんどん増えていきました。

安田

もはや「リユース業」ではなく「接客サービス業」ですね。お店が黒字化したのはいつ頃のタイミングだったんですか?


藤村

今から6年前ですかね。1号店をオープンしてから6年目です。それまで毎年倍々で赤字が増えていましたが(笑)、3600万円の赤字を出した翌年に1億800万円の黒字になりました。

安田

ははぁ、「お客さんを喜ばせること」を徹底したら、いきなり上向きになったんですか。すごいですね(笑)。


藤村

安田さんが「お金の上手な使い方は、使いまくることだ」って仰っていたじゃないですか(笑)。だからそのとおりに「お客様のためにどんどんお金を遣いまくるぞ〜」とやったら、収益率が10%になって。それから今日まで6年間、ずっとそれくらいの収益が出ています。

安田

設立から6年間はずっと赤字で、いわば会社の「お荷物」だった『電材買取センター』が、今ではフジデンさんの中心事業としてしっかり利益を出し続けられるようになったんですね。いやぁ、素晴らしいですよ!

 

 


対談している二人

藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役

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1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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