第40回 朝令暮改が当たり前の時代

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第40回 朝令暮改が当たり前の時代

安田

今日は「朝令暮改」について話をしたいんです。朝に命令を出して夕方それを変える、みたいな意味ですけど、今の時代って日々目まぐるしく変化しているじゃないですか。


西崎

そうですねぇ。夕方どころか、ランチ前に変更みたいなこともありそうです(笑)。

安田

そうそう(笑)。トゥモローゲートさんでもそういうことはあるんですか?


西崎

もちろんもちろん。日常茶飯事ですね(笑)。

安田

へぇ、そうなんですか。そういうの社員さんは怒らないんですか? 「朝言ってることと違うじゃないか!」って。


西崎

うーん、僕はでも、「なぜ変えるのか」をかなり意識して説明するようにしているので。「ABにします。以上」みたいなことはしないというか。

安田

なるほどなるほど。それは大事なことですよね。でも世の中には西崎さんみたいな経営者ばかりじゃなくて、一方的に朝令暮改する人もいるじゃないですか。


西崎

うーん、まぁ、いらっしゃるんでしょうねぇ。

安田

全然いますよ。しかもロジックじゃなく気分で変えちゃう人もいる。ただね、気分で変えたプランが意外と正解だったりもするわけですよ。ワンマンで大変な社長なんだけど、業績は着実に伸びているって会社は現実にあるわけで。そういう場合、それは「いい社長」なんですかね。


西崎

判断するのが社長の役割だとすれば、いい社長だと思いますね。周りからは「気分次第で決めている」と見えるかもしれないし、本人も直感的にやっているのかもしれないけど、やっぱり「嗅覚」って大事だと思うので。

安田

確かに確かに。でも一方で、西崎さんみたいに「これこれこういう理由で変えるんだよ」って説明も大事じゃないですか?


西崎

あった方がいいとは思いますけど、でも極論、結果がうまくいっているうちは別になくてもいいのかもしれない。

安田

ああ、なるほど。実際に業績が上がって、それで給与が上がったりしていれば、そんなに不満にはならないと。


西崎

ええ。でも逆に結果が出なくなった時のダメージは大きいでしょうね。「社長がよく考えずに決めたからだ。社長のせいだ」って話になっちゃう。それにそういう社長の場合、うまくいった場合も社員の中に「なぜうまくいったか」が蓄積されないんですよね。

安田

ああ~、なるほど。「よくわからないけどうまくいったね」でしかないから、再現性がないんですね。社長の指示がなければ動けないままというか。


西崎

そうそう。こういう変化の早い時代においては、その社長みたいに一人でパッと決めてパッと動く方が有利なケースはたくさんある。でも、多少時間的ロスが発生しても僕が説明するのは、社員一人ひとりに「なぜうまくいったか・なぜうまくいかなかったか」を考えてもらうためでもあって。

安田

なるほどなぁ。でもやっぱりそれは、トゥモローゲートさんくらいの組織規模くらいが限界な気もしますけどね。何百人何千人みたいな規模になってくると、なかなか難しいんじゃないかなぁ。


西崎

それは仰るとおりだと思います。組織が大きくなればなるほど難しくなる。なので僕としては今より極端に大きくする気もないんです。こうして安田さんと話している中で「別に大きくしなくてもいいか」と思うようになったというか。

安田

ほう、そうでしたか。


西崎

ええ。会社をもっと成長させたいって気持ちはあるんですけど、大きくしていく過程でマインドやビジョンが薄まっていくなら、本末転倒だなと思っていて。

安田

なるほどなるほど。とはいえね、社員もだんだん年齢を重ねていって、家族もできて子どももできて、もっと稼がないといけない、って状況になりますよ。そうしたら組織を大きくして新たにポジションを作ったりしないといけなくなったりする。


西崎

そうなんですよね。そのあたりはまだ明確なプランはないんですけど、以前ちょっとお伝えしたように、僕自身も長く社長に居座る気はないので。それで同年代の役員たちと別の会社を立ち上げたりね、そういうことをしていきたいなと。

安田

そうでしたね。それもすごくいいですよね。自分たちの経験とかスキルを生かした別事業を立ち上げてね。


西崎

そうそう。そうやって新陳代謝することで、社員たちにも長く活躍してもらえるかなと思っているんです。まぁ、こうして口で言うほど簡単なことではないと思うんですけど。

安田

まぁ西崎さん自身は何をやったってうまくいくと思いますよ。でも一人ひとりの社員の人生まで考えるとね、なかなか頭の痛いところですよね。それが経営者の宿命でもあるわけですけど。


西崎

いや本当に(笑)。難しい問題ですけど、楽しみながらやっていければなと思っています。

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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