「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。
第30回 マハロコは、何屋さん?
今日は『マハロコ』というお店について、改めてお聞きしたいと思います。読者さんの中に「マハロコって一体何屋さんなんだろう?」と思っている方もいるんじゃないかと思いまして(笑)。
確かに(笑)。ネイル、ハワイアンジュエリー、英会話…さらに最近はワッフルも売っているし(笑)、何屋さんなのか不思議に思われても仕方ないかもしれないですね(笑)。
しかも内装はサーフショップみたいですし、岩上さんはアロハシャツ着てますし(笑)。何も知らずに入ってきたお客さんはびっくりするでしょうね(笑)。ちなみに岩上さん自身はマハロコを何屋さんと定義されているんですか?
実は今まさに、そこを再定義しているところなんです。たぶん普通は、お店として1つのコンセプトを深掘りしていくべきなんでしょうけど、僕はそこに違和感を持っていまして…。
あぁ、わかります。もしマハロコのオフィシャルサイトに「マハロコは、○○に特化した美容室です」と書かれていたら、「それは違うでしょ!」ってツッコミを入れちゃいそうです(笑)。
やっぱりそうですよね(笑)。そういうこともあって、今は「マハロコ」という場所をどう表現していけばいいか考えているところです。ウチでやっていること全てが「美容」に紐付いているわけではないので、なかなか難しいんですけど。
そうか、ネイルやアクセサリー販売だったら「美容」に関連付けてもおかしくないですけど、ワッフルはちょっと異質かもしれないですね(笑)。
僕もそう思います(笑)。それで、最近サーフィン仲間として知り合ったWebデザイナーに相談してみたんです。「マハロコを再定義したサイトを作りたいんだけど、どうすればいいと思う?」って。
ほうほう。なんて言われました?
「雛形的に言えば、アウトレットとかショッピングモールみたいなサイトになるんじゃない?」って言われました。
つまりマハロコはショッピングモールみたいなものだ、と?
ええ。そういう場所って、休日にフラッと寄って、散歩がてらウィンドウショッピングをして、気に入ったものがあればそのまま買う、みたいな使い方をするじゃないですか。その感じがマハロコに似ていると言うわけです。
なるほどなるほど。要は「その場所に行って過ごす」ことが目的なんですね。なんなら何も買わずに帰ってもいいと。
そうそう。ただ、ショッピングモールで買い物をする人たちって、あんまり「店員とのコミュニケーション」は求めていないような気がするんです。そこはマハロコとは違うんですよ。ウチにいらっしゃる方のほとんどが「スタッフと話すこと」を目的にいらっしゃるので。
ふーむ、なるほど。ちなみに何を話しに来るんです? 美容のお悩みとかどんな髪型にするとかですか。
もちろんそれもありますけど、ただの雑談をしに来る人もいますし、それこそ「ちょっと近くまで来たから」と寄ってくれる人もいます。そうやって特に目的なく来店してくれた方が、ワッフルとかを見て気に入ってくれたりして(笑)。
なるほど(笑)。そういえば以前、美容室のお客さんが施術後にパンを買って帰っていた、ってお話をされていましたっけ。
そうそう。施術をしながら「なんでパンのいい匂いがするの?」「実は今、パン屋もやっているんです」「え、私も買えるの?」「どうぞどうぞ」みたいな(笑)。そういうのがやっぱり楽しいんですよ。
なるほどなぁ。自然なコミュニケーションでいいですね。でも、話を聞けば聞くほどやっぱり何屋さんなのかわからなくなります(笑)。
そうなんです(笑)。僕の娘が店内でネイリストをしているんですけど、「美容師の父がオーナーなんです」とか「アクセサリーも売っているんですよ」とか「実はワッフル屋さんも始めまして」とあれこれ宣伝してくれていて。
なるほど。ネイルの施術をきっかけに、他のコンテンツの宣伝もしてくれるんですね。
そういうことです。ウチでネイルをして、髪を毛を切って、アクセサリーやワッフルも買って帰ってくれるお客様もいますよ。
すごいですね(笑)。ちなみに初めて来られるお客さんは、やっぱり美容院目的で来られることが多いんですか?
基本はそうですね。あ、ただ8月にワッフル屋さんがオープンしたんですが、その月だけはワッフルの購入を目的にいらした方がすごく多かったですね。その月は来客数がいつもの7倍くらいあって。
ふ〜む、ここまでお話を聞いていて思ったのが、マハロコって、青山にあった「ベルコモンズ」と似ているような気がします。
ああ、ベルコモンズって国道246沿いにあったところですよね?
そうそう。いろんなお店が入っていたから「ベルコモンズ」ってショッピングモールの名前だと思われがちなんですけど、あれ実は、ビル自体の名前なんですよ。
へぇ、ビルの名前が「ベルコモンズ」なんですか?
そうなんですよ。当時もそれが建物の名前だっていうことを知らない人も多かったと思うんですけど、でもそれでいいと思っていて。だって「ベルコモンズ」って言葉を聞けば「あぁ、あの246沿いのなんかおしゃれな場所でしょ?」ってイメージがわくじゃないですか。
確かにそうですね。つまり抽象的な捉え方をされてもいい、と。
そうそう。だからマハロコも、細かな定義とか具体的な説明とかはなしにして「マハロコはマハロコです」でいいんじゃないのかなぁとも思うんですよね。
なるほど! フワッとしたイメージでもいいから、「マハロコってこういう場所なんだね」というのがわかってもらえればいいわけですか。いやぁ、安田さんとお話して、だいぶ思考がクリアになりました。ありがとうございます!
対談している二人
岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表
美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。