2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第318回「トップの決断で現場は激変する」
福岡県古賀市の中学校が新たな取り組みにチャレンジしておりまして。夏休み、冬休みを短くして6時間授業を5時間にする、先生の残業を減らして生徒の集中力も高めるという。
素晴らしい取り組みですよ。
夏休みが短くなったら先生に不評かと思いきや、先生の定着率が上がって「この学校で働きたい」という人も増えてるとのことです。
古賀市の教育長の長谷川さんって方、本当に素晴らしい。やっぱトップ次第だなと思う。
休みの長さって校長が勝手に決めていいんですか?
公立学校には教育委員会というものがありまして。例えば古賀市には古賀市教育委員会があるんですけど。この教育委員会で決めるんです。
なるほど。
行政が教育に介入すると弊害があるってことで。
教育委員会はよくOK出しましたよね。休みを短くすることに。
教育委員会のトップが「変える」って決めたから。強いわけですよ。
なるほど。それを決めたのが先ほどの長谷川さんだと。
そうです。長谷川さんは教育委員会のトップなので。長谷川さんの下に各校の校長先生がいるわけです。教育長は権力を持っていて今回はそれをいい形で使っている。
古賀市の中学は他も全て同じ条件ですか?
そうです。市の教育委員会が決めたことなので。各学校の校長はそれに従ってるわけです。
すごいですね。
素晴らしいです。
大成功ですよね。教員になるかどうか迷っていた人が「こういう職場だったら働きたい」って。夏休みが増えるより平日5時に終わる方がいいんでしょうか。
おっしゃる通り。要するにやってることは普通の一般企業、大企業と同じ。まず時短しましょうってことなんですよ。
なるほど。
どうやら6時間目の生徒は集中力がないなと。だから6時間目をなくしましょうと。現場をよく知ってる方ですよ。長谷川さんは。
すごい決断力ですね。
実行力がすごいです。各校の校長先生とちゃんと話をして、合意形成して時短でまとめて。その分夏休みを減らした。まずこれが1つ。
まだあるんですか?
2つ目は「外注できるものは外注しよう」という発想。つまりアウトソーシングの発想を大胆に取り入れてる。ここも古賀市の素晴らしい取り組みです。
すごいですね。経営者でもなかなか出来ないのに。ちなみに何をアウトソーシングしたんですか?
例えば部活とか。
はいはい。水泳の授業も外注した方がいいって言われてますもんね。
先生の手間がすごいから。先生が水泳まで教える必要なんてないんですよ。水泳指導のプロに任せればいい話で。
ほんとそうですよね。
今はほとんど5時間で終わるから夕方に帰れる。部活も外注できるものはみんなアウトソーシングした。教員の負担が減った。
休みが減って文句を言う親はいないんですかね。
逆にシングル家庭の方から感謝されたそうです。ありがとうございますと。学校に行かせれば給食も出るし。意外に好評だったっていう。
夏休みって親は大変ですからね。休みが短くなったらお母さんも働けるし。収入も増える。
その通り。
こういう方が文科省の偉い人になっていけばいいのに。
そうなんですよ。現場の事情もよくわからない人がトップに立つから。インボイスもそうですけど「現場がわかってたらこんなことしねえよ」ってことを平気でやってしまう。
先生の成り手がどんどん減ってますけど。この改革が一石を投じるかもしれませんね。
古賀市モデル、全国に広がってほしいです。
移動した先生から「早く古賀市に戻してください」って言われるそうです。他の教育長さんもそれを見て変えていくんじゃないですか。
どうかな。何かを変えるってすごくエネルギーが必要ですから。「めんどくせえな」って放置する人がほとんどだと思いますよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。