第31回 東広島市の『ninon patisserie(ニノン パティスリー)』に、ようこそ!

この対談について

地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。

第31回 東広島市の『ninon patisserie(ニノン パティスリー)』に、ようこそ!

安田

以前の対談で、スギタさんの会社が独立支援をしたお店についてお聞きしました。8月のオープンから数ヶ月が経ちますが、その後いかがですか?


スギタ

ありがたいことに、連日お客様が途切れることなく来てくれてるみたいです。

安田

ああ、それは良かった! お店の立地的にちょっと…というようなお話をされていたので、ちょっと気になっていたんです。


スギタ

確かに、「あれ? どこ?」って通り過ぎてしまうくらい目立たない場所なので(笑)。それでも地元のお客様が何度もリピートして来てくださっているようですね。

安田

へぇ〜すごいなぁ。改めて、お店の名前を教えていただけますか?


スギタ

『ninon patisserie(ニノン パティスリー)』です。ニノンって、フランス語で「絹の織物」という意味があるらしくて。いろいろな人に支えられてきたことでお店を出せたし、これからもたくさんの人に出会うだろうということで、「織り重なり合う糸のように人の出会い、つながりを大切にしたい」という想いを込めたそうです。

安田

それは素敵な店名ですねぇ〜。


スギタ

あとは店長のあだ名が「のんちゃん」なので。それも掛けてみたそうです(笑)。

安田

なるほどなるほど(笑)。そんな『ニノン』には、どんな商品が並んでいるんですか?


スギタ

「のんちゃん」はもともと僕たちのお店で10年以上働いてくれていた方なんです。その歴史の中で一緒に作ってきたお菓子の中でも、彼女の思い入れの強いお菓子が並んでいます。例えば彼女が大好きな「シブースト」とか。

安田

シブースト…初めて聞きました。どんなお菓子なんですか?


スギタ

フルーツのピューレと卵でクリームを作って、そこにメレンゲを合わせてゼラチンで固めたものです。ムースに似ているかな。口の中でフワッとしながらスッと溶けていく食感で。これまでに「マンゴー」「いちじく」のシブーストを出していますね。

安田

Instagramの写真を拝見しましたけど、本当に美味しそうですねぇ。店長さんの「私が大好きなこのお菓子、皆さんにも食べていただきたい!」という気持ちが伝わってきます。


スギタ

それが1人でお店をやる醍醐味だと思うんです。お菓子1つひとつに強い思い入れがあるからこそ、お客様にも「このお菓子は、ここにこだわっているんです」とか「これは紅茶と一緒に召し上がると最高に美味しいんですよ」と実感を込めてお伝えすることができる。

安田

あぁ、確かに。作る人と販売する人が別々だと、商品の細部まで熱く語れるような接客ってなかなかできないですもんね。


スギタ

そうなんです。本人が「私の大好きなお菓子をぜひ食べて」という気持ちで作って販売するからこそ、その気持ちもしっかりお客様に伝わるのかなと思っています。

安田

確か以前のお話では、メニューは基本的に店長さんに決めてもらうと仰っていたかと思います。ということは、スギタさんから「このメニューは入れておいて」というような話はしなかったんですか?


スギタ

いえ、「ミルクレープはあったほうがいいんじゃない?」って言いました(笑)。というのも僕自身『ダニエル』での修行時代からずっとミルクレープが好きで、『ハーベストタイム』のオープン当初からずっと作り続けている商品でして。だから新店舗でもぜひ…って(笑)。

安田

代々受け継がれていく味、という感じがしていいですね〜(笑)。ちなみに『ニノン』で一番売れている商品ってなんなんですか?


スギタ

これはもう、イチゴのショートケーキ。『ハーベストタイム』も同じなんですが、ダントツで数が出ます。

安田

やっぱりそうなんですね。そういえば前回の対談でもイチゴの商品は鉄板だって仰っていましたっけ。


スギタ

ええ。それにイチゴのショートケーキって、「そのお店が美味しいかどうか」の基準になる商品なんですよね。そこで気に入っていただけることで次の来店につながり、ゆくゆくはホールの「お誕生日ケーキ」につながっていく。

安田

ははぁ、なるほど。確かにお誕生日ケーキって、ショートケーキを大きくしたようなものですもんね。ということはお誕生日ケーキの方が利益も出せるんですか?


スギタ

はい、それはもう確実に。ぶっちゃけた話、ショートケーキって手間がかかるわりに大して儲からないので(笑)。

安田

へぇ…素人考えだと、小分けにして売るほうが単価が上がって儲かるのかと思っていました。でもホールケーキなんて、誕生日かクリスマス以外では売れなくないですか?


スギタ

売れないですね(笑)。だからどれだけたくさんのお客様がついてくださるかがカギで。…というのも、毎日毎日誰かのお誕生日ではあるわけじゃないですか(笑)。

安田

確かにそうですね(笑)。つまり誕生日がバラバラの365人がいたら、毎日売れるかもしれないわけだ(笑)。…実際『ハーベストタイム』では毎日コンスタントにホールケーキが売れるんですか。


スギタ

ええ。1日30台くらい…多い時だと50台近く売れます。ちなみにクリスマスは1日に1500台とか売れますよ(笑)。

安田

1500?! それはすごい(笑)。じゃあ『ニノン』のこれからのさらなる発展のカギは、今来てくれているお客様を今後どれだけホールケーキにつなげていくか、ということになりそうですね。


対談している二人

スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役

1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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