以前、「老後2000万円問題」という
ワードが流行ったことがありました。
当時、多くの方が感じたことだと
思うのですが、ひと口に個人の生活
スタイルと必要なお金といっても
個人の事情は人の数だけあり、
とにかく2000万円あれば解決すると
いいきれるものではありません。
それでも、これに興味が集まったのは、
ひとえに「2000万」という具体的な
数字があったからでしょう。
具体的な数字により、
わたくしたちは生活における実際の費用と
比較できるようになり、
はじめて多いだの少ないだのをいうことが
可能になったわけです。
まあ、「2000万円」という数字自体、
一定の設定とそのシミュレーションの上に
仮定されたものではあったようですが。
しかし、少なくともわたくしたちには
「老後のお金」というテーマに対して
感覚的に共有している前提があり、
そこでは「2000万円」はかなり
正解に近い値ではなかったかと思うのです。
世帯の世代別貯蓄額の平均値をみたとき、
平均値も中央値も
60代以降の方が50代以下の世代よりも
高いということ、
同世代間ではある程度(3000万円とか)
以上の資産のある方が多数派ではあるが、
それでも相対的なものだということは
共通しています。
60代以降の方が資産を持っている理由は、
当然、インカムがない状況でこれから
医療などを含めた生活費に
充てていくためです。
相続に悩む規模の方であれば別ですが、
比較的多くの方は、資産とは目減りして
いくもので、そのゴールは
「最後にゼロにならないこと」
であるはずです。
ですが、預金にしても株にしても、
少しずつ取り崩し、ゼロに向かいながら
進むというのは、
不安があることが当然です。
「もし90まで生きたら十分すぎるやろ。
あとはもう知らんわ」
というような大胆な割り切りは、
ただでさえリスクに敏感で
貯金大好きメンタルの日本人には
基本的に難しいでしょう。
ゼロで終わることを
本当に目指すのは現実的ではなく、
使うあてのないいくばくかの
「丸ごと残ったお金」が
心理的に必要なはずです。
身体やその他の問題である程度の
予想外の出費があったり、
あるいは継続的になにかの費用が
かかり続けたり、
あくまで個人の生活レベルで
周辺であるかもしれないリスクを
お金に換算したとします。
そのとき、生活費とは別の
「丸ごと残ったお金」が
いくらあれば、一切の心配がなく
社会とつながっていられるのか……
と考えたとき、それがたとえば
「2000万円」
くらいではないか。
そんな風に思うのでございます。