この対談について
健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。
第79回 野生動物が「不健康」ではない理由
第79回 野生動物が「不健康」ではない理由
前から久保さんにお聞きしてみたかったんですが、動物には「健康」や「不健康」という概念があるんでしょうか?
うーん、どうなんでしょうね。動物に聞いてみないことにはなんとも言えませんが(笑)。ただ少なくとも、我々人間のように「生活習慣病」で悩む野生動物はいないと思います。
確かにそうですよね(笑)。もとの体型がゴリラのようにマッチョな動物もいれば、カバや豚のようにちょっと太り気味の動物もいますけど、それが「不健康」だというわけでもないでしょうし。ましてや「ダイエットが必要な動物」なんていないですよね?
あぁ…それで言うと、ペットや家畜って野生動物とはちょっと違うと思いませんか? 特にペットは人間とほぼ一緒の生活、つまり動物にとって「不自然な生活」を送っているんです。だから野生動物に比べたら圧倒的に「不健康」といえるかもしれない。
そう言われてみると、家畜も相当不自然な状態ですよね。人間にとって都合がいいように育てられているわけだから。
ええ。だから野生動物は「健康であること」が、弱肉強食の世界を生き残るための最低条件なんだろうと思いますね。
確かに野生には人間のように「寝たきり」のまま生きながらえることはできませんもんね(笑)。とはいえ野生動物も毎日決まった時間に餌が食べられるわけでもないですし、食べるものも偏っているじゃないですか。しかも大部分の時間を寝て過ごしている。そんな状態を「健康」だというのも、なんだか不思議な気がします。
人間からすれば「三食バランスいい食事を食べ、元気いっぱいに動いている人が健康」というイメージがあるかもしれません。でもそれが必ずしもすべての動物に当てはまるとは言えないと思うんです。
ははぁ、なるほど。人間は「健康のため」と言って毎日のようにジムで走っている人もいますけど、動物はそれをしていないからといって「運動不足」になるわけではないと。
そうですね。獲物を取る瞬間はものすごいパワーで動きますし、逆に捕まえられないためには相当のスピードで逃げなければならない。それができなくなったら死んでしまうわけで。
なるほどなぁ。じゃあカバやイノシシみたいに脂肪がたくさんついていても、それがイコール不健康な状態だとは言えないと。
そうそう。むしろ寒さをしのいだり外敵から身を守ったりするには、ああいう脂肪が必要だったということなんだと思いますよ。
では人間にとっての「健康」って、いったいどういう状態なんでしょうか。脂肪が多いのはなんとなく健康じゃなさそうなので、やっぱりマッチョがいいですか?
そうですねぇ。ちなみに人間の最大の特徴って「歩いて長距離移動ができること」だってご存知でしたか?
ああ、聞いたことがあります。しかも他の動物に比べてものすごく持久力もあるって。
そうですそうです。人間の祖先は200万年くらい前にアフリカで生まれたと言われていますけど、その時の一番大きな変化が「直立歩行で森を出たこと」だと言われているんですよ。実際、人間ほど全世界に散らばっている動物っていないじゃないですか。
確かにそうですよね。アフリカからアジア、アメリカ、オーストラリアまで、ありとあらゆる場所まで移動できたのは人間だけです。
仰るとおりです。人間ってパワーではライオンやゴリラに負けるし、走るスピードも草食動物には負けてしまう。でも「長距離を歩けること」に関しては一番なんです。
そういえば、「昔は歩き続けることでうさぎを捕まえてた」って聞いたことがあります。人間が歩いて近づくと、うさぎはぴょんと跳ねて逃げる。そしてまた歩いて近づいて、跳ねて逃げる…これをずっと繰り返すことで、うさぎが疲れて動けなくなってしまうって。
面白い話ですね。そういう意味でも私は、人間は「歩く」という能力を磨いていけば健康になれるだろうと思っています。
なるほどなるほど。つまり「たくさん歩ける状態」が人間にとって一番健康的な体型というわけですね。
そういうことです。ところが今って、「歩くこと」を必要としない社会になってしまっているじゃないですか。だから健康に対していろいろな不都合が生まれてしまっているんだと思うんですよね。
あぁ確かに。特に地方になればなるほど「車社会」になっちゃっていますよね。たった100m先のコンビニに行くときですらわざわざ車で行ったりするし(笑)。
そうなんですよ(笑)。そうやって社会が便利になればなるほど人間は不健康になってしまうという事実を、もっと真剣に捉えるべきだと思いますね。
なるほどなぁ。じゃあこれからはもっと「歩くのに適した筋肉がついている人」がモテるような文化にしてほしいですね。そうすればみんなそこを目指すと思います(笑)。
対談している二人
久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家
仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。