第46回 就職人気企業になるメリットとデメリット

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第46回 就職人気企業になるメリットとデメリット

安田

昔採用の仕事をやっていた頃、就職人気企業ランキングの1位をずっと追いかけていたんですよ。そういうのってトゥモローゲートさんは興味あるんですか?


西崎

ありますよ。そもそも僕らのビジョンマップのゴールの1つに、マイナビと日経が連動でやっている「就職企業人気ランキング」にランクインする、っていうのもありすし。部門ごとのランキングですが、そのベストテンには入れるようになろうって。

安田

へぇ、なるほど。ちなみにそれはどういう目的なんでしょう。私達の場合は、採用目的とマーケティング目的の両方でしたけど。


西崎

ウチも同じですね。ランクインすることで知名度や信頼度が上がって、売上や採用にいい影響を与えてくれるかなと。ちなみにワイキューブさんってどれくらいまで行ったんでしたっけ? かなり上位だったと記憶しているんですが。

安田

文系の総合で17位が最高でしたね。


西崎

ははぁ、すごいなぁ。100名以下の企業に限れば1位じゃないですか?

安田

はい、そういう基準なら1位でした。某メガバンや某アミューズメント企業よりも上の順位でしたから。ただね、相応の効果があったかというと、そうでもなかったなというのが正直なところで。


西崎

へぇ、そうなんですか。あまり効果を感じなかった?

安田

いやもちろんね、それによって知名度はかなり上がったし、依頼も爆発的に増えましたよ。つまりマーケティング的にはすごく大きな成果があった。一方で、「就職人気企業ランキング」という本来の基準で見ると、そこまでだったなぁと。


西崎

つまり、採用の面ということですね。でもランクインしたことで応募者は増えたんじゃないですか?

安田

そうですね。ピークのときは説明会に1万人以上来てくれましたから。でもねぇ、今だから言えますが、そういうタイミングで集まったのは、ある種ミーハーな学生さんというか、「なんか有名らしいから行っとこう」みたいな人が大多数だったと思うんですよ。


西崎

ああ、なるほど。でも全体の母数が増えれば、自然と「いい人材」の数も増えるようにも思えますが。

安田

それはそうなんですが、「いい人材」っていうのは他の企業にとっても「いい人材」なわけでね。しかも、なまじランクインしてしまったことで、採用競合のレベルもグッと上がってしまうわけですよ。だから、「ぜひウチに欲しい」と内定を出しても、ものすごい大企業からサクッと内定をもらってそっちに行っちゃう。


西崎

ふーむ、なるほど。難しいところですね

安田

ええ。しかもね、これも生々しい話ですけど、ブランディングという観点で考えると、「不採用にする人への対応」にも気をつけなきゃいけないでしょ? 何しろ、落とした人が将来自分たちのクライアントになるかもしれないわけですから。


西崎

ああ、よくわかります。その人の家族とか知り合いとかもそうですよね。「トゥモローゲートは最悪の会社だった」なんて言われてしまうと、機会損失になりかねない。

安田

そうそう。ちなみにトゥモローゲートさんでは、不採用者に対してどんな接し方をしてます? 結構丁重にやられてるんですか。


西崎

そうですね、割と丁重にやってきたと思います。必ずしもブランディング目的ということでもないんですが、昔は不採用のメールを送る時も「なぜ不採用だったか」を一人ひとり書いて送ったりしてましたから。

安田

へえ! ものすごく手間がかかりそうです。でも「昔は」ってことは、今はさすがにやってないんですか。


西崎

全員に対しては難しくなっちゃったんですが、選考の後半まで進んだ方には今も同じようにしていますね。

安田

なるほど。でもそういう心がけはすごく大事ですよ。さっき言ったように、「不採用だったけどすごく真摯に向き合ってくれた」とその子が思って、いつか担当者として問い合わせをしてくれるかもしれない。


西崎

そうですね。まぁ、端的にそこを狙っての対応ということでもないんですけどね(笑)。ただ、そうやって真摯に対応することが、ウチのブランディングにもいい影響を与えてくれたらいいなとは思います。

安田

相変わらず謙虚ですねぇ(笑)。でも冒頭にあったように、ランクインに関しては明確に目標として頑張っているわけですよね。


西崎

そうなんですがただ、正直「ランクインすること」が目的ではなくなってきているかもしれませんね。それこそ真摯に事業を続けていく中で、あるいはSNSなどで発信してく中で、自然にランクの中に名前が載るようになったらいいなというか。

安田

ははぁ、なるほど。でもなんとなく、そういう方がトゥモローゲートさんらしい気がします。

 

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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