2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第325回「飲食業界のネクストステージ」
飲食店の人手不足倒産が増えてますね。「値上げができない倒産」とも言われてますけど。
そもそも外食産業って食品メーカーの下なので。
食品メーカーの下?
食品メーカーから原材料を仕入れないと店ができないわけですよ。食品メーカーの上を行くってことができない仕組みで。
食品メーカーがある程度仕上げたものを店で出してるってことですか?
おっしゃる通りです。仕入れて加工して売るのが外食店の基本なので。
そうなんですね。
もちろん自分たちで全部作ってるお店もあります。かなりレアですけど。
たとえば焼肉店なんて肉を仕入れて焼くだけじゃないですか。焼くのもお客さんだし。
その原材料の肉をどこから仕入れてるかですよ。いま円安で国産牛や国産豚の方が安いんです。
だったら国産を使えばいいじゃないですか。
いやいや。仕入れルートを開拓するって難しいんですよ。長年やってる取引関係との単価もあるから。同じ肉でも相手によって全部値段が違うんですよ。
それは仕入れる量の違いで?
量が多いとか長年取引してるとか。いくらで仕入れられるかって生命線なんですよ。
じゃあ焼肉屋さんの倒産は仕入れ価格が上がったことが原因だと。
焼肉業態って原料を仕入れてただ焼くだけじゃないですか。
そういうイメージですね。
わざわざお店に行って食べなくても「家でやればいいよね」って人が増えていて。あとは燃料費とか光熱費の高騰でしょうね。どうしても火をいっぱい使うから。
ホットプレートだとお店のようには美味しく焼けないですけど。
いま凄いんですよ。ホットプレートも進化していて。焼肉コンロも煙が出ないし。
そうなんですね。
遠赤外線、無煙ロースターが小型で安くあります。だから美味しい国産牛を自分で買ってきて焼けばいいだけ。
なるほど。
「家で焼肉やろうか」との競争になるから、この業態は厳しいんですよ。タレもスーパーに行けば凄い種類があって。
確かに。叙々苑や牛角のタレが売ってますもんね。
おっしゃる通り。焼き肉業態は来店動機が強いお店じゃないと厳しいです。
ちょっとお高めにしていい肉を仕入れるとか。どうせいい肉を食べるなら「お店で食べたい」となりませんか?
安田さんレベルのお客さんが何%いるかですね。かなり少数派だと思いますよ。
じゃあこの先、焼肉屋さんはどんどん減っていく?
日本式の焼肉屋さんにはもう一つ大きな問題があって。アルバイトの確保がスッゴク難しいんですよ。
日本式の焼肉屋さん?
そう。じつは韓国式焼肉屋はアルバイト集めに困らない。
え?どうしてですか?
いま第二外国語で一番人気があるのってハングル語なんですよ。「どこでバイトしてるの?」「韓流の焼肉屋さん。」「えー!すごい可愛い。おしゃれ。」みたいな。
そんなことが起きていたんですね。
飲食は採用が厳しいってみなさん言うんですけど。
実際に厳しいですよね。
実はぜんぜん困ってない店もあるわけですよ。今あらゆる業界で採用の勝ち組と負け組がはっきりしつつあります。
確かに。ぜんぜん採用に困ってない会社ってありますもんね。
そう。飲食業でもアルバイト確保が上手な勝ち組と下手な負け組に分かれてます。スターバックスなんてこの20年人員で困ったことないはずです。
そうなんですね。
はい。飲食は集客競争が続いてきましたけど、今後は「働く人員確保のうまい下手」が勝敗を分けますよ。
採用が上手い会社は多店舗化に成功し、採用下手なところは淘汰されていくと。
そういう時代に突入しましたね。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。