庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第72回 すべての庭がつながる「借景の町」

中島さんってよく借景のお話をされますよね。外の景色を自分の庭の景色の一部として借りるという。あれって逆もあり得るんじゃないかと考えたんです。つまり自分の家の庭が他の人にとっての景色になる、ということもあるのかなと。

同感です。以前、6棟分の分譲地ですべてのお庭を作ったことがありましたけど、まさに互いに借景になることで、素敵な景観が生まれていました。

その案件はよく覚えています。お互いが借景になっていて、プラマイゼロどころか皆が豊かになっている。そういう素晴らしい場所がある一方で、「なるべく自分の庭は他の人に見せずに自分だけで楽しみたい」という人も多いじゃないですか(笑)。

そうそう。大切に育てている木を見て、他の人が和んでくれたら嬉しいですし、周りの人から「素敵なお庭だね」って言われたら気分もいい。中島さんはその辺も狙ってお庭を作っているんじゃないかと思うんですが、どうですか?

本当にそう思います。そういえば以前、ライトアップすることで建物に木の影が映るデザインのお庭を作らせていただいたんです。ご本人は「夜に家に帰るたびにほっとするんだよ」と喜んでくださったんですが、その後、ご近所の方にも喜んでいただけているんだという話を聞いて、すごく嬉しかったんですよね。

確かに町全体を変えるとなると、行政から変えていかないと難しいでしょうね。でもトップが変われば思い切った改革もできますから。例えば「今までにない素敵な街づくりをします!」という市長さんが出てくれば、一気に実現することも可能だと思いますよ。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。