第75回 住宅の変化とともに進化する庭の未来

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第75回 住宅の変化とともに進化する庭の未来

安田

今日は、ガーメントデザイナーの考える「日本家屋の変化」についてお聞きしてみたいなと。中島さんは以前、庭も外構も「家が着る服」として捉えていると仰ってましたよね。


中島

そうですね。庭だけを独立して考えるのではなく、建物とも合ったものをご提案するようにしています。その比喩として「家の着る服」という表現をすることもあります。

安田

それで思ったんですが、もともと日本庭園専門だった中島さんがガーメントデザイナーになり、ジャンルに囚われない庭造りをするようになったのは、家そのものが変わってきたからなんだろうなと。


中島

そうですね。時代によって家のデザインや構造はどんどん変化していますので、それに併せて庭の在り方もどんどん変わっていくわけです。日本庭園が減っていったのも、瓦屋根の家が減ったこととかなり相関関係があるはずで。

安田

ふーむ、なるほど。確かに昔ながらの瓦屋根ってあんまり見なくなりましたもんね。…でもそう言われると、今の家の屋根って何でできているのかよくわからないかもしれない(笑)。


中島

現代は、多くの家がトタン屋根ですね。トタンは軽くて耐久性もあり、地震の時も瓦のように落ちたりしません。それにスタイリッシュな仕上がりにできるので、最近はすごく人気で。

安田

へぇ〜「トタン」と聞くとむしろスタイリッシュとは真逆にあるような気もしますが、実際は広く使われていると。


中島

そうなんです。張り方次第ですごくオシャレに見せられますよ。ちなみに僕の自宅もトタン屋根です(笑)。

安田

そうなんですね! 中島さんがご自身で選んでいるなら安心ですね。ちなみに屋根以外はどうですか? 時代によって変化してきた部分はありますか?


中島

そうですね。もちろん建物自体の形も変わってきています。昔は三角屋根や外に柱が出ている家が多かったんですが、今は真四角に近い形の建物が増えました。それに伴って、縁側なんかもなくなっていって。

安田

ああ、確かに。そうやって家のデザインも少しずつ変わっていったことで、庭の形も変わっていったと。ちなみに最近はいわゆる日本庭園の提案をすることはまったくないんですか?


中島

そうですね。数寄屋造りなどの日本建築でなければ、和のデザインのお庭を提案することは少ないです。かといって完全な洋風建築ばかりかというとそうでもないんです。和洋折衷というか、フラットな雰囲気の家がすごく増えている。

安田

そう言われてみると、日本の家は完全に洋風でもなく、ヨーロッパ風というわけでもないですよね。現代的な「和」と「洋」の融合といった感じで。いわば「現代ジャパニーズ」というか。


中島

ええ、まさに。そういうお家に完全な洋風庭園を持ってきてもミスマッチになってしまいますから、うまくバランスを取りながら最適なプランを提案させていただいています。もっとも、洋風建築にすごく手の込んだ日本庭園が作られていることもあって、むしろミスマッチを楽しむというスタイルもあって。つくづく奥の深い世界だなと。

安田

なるほどなぁ。聞けば聞くほどセンスが求められる仕事ですね。デザインだけでなく生活に合わせた便利さも絶対に必要ですし。


中島

そうですね。住む方が快適に過ごせることが最優先で、その上で四季を感じられたり、癒される空間を提案していきたいですね。

安田

そこを両立してもらえるのが中島さんならではですよね。ところで中島さんから見ると、日本の住宅は今後どちらに向かっていくと思いますか? もっと洋風に寄っていくのか、あるいは和のテイストに戻っていくのか。


中島

うーん、大工さんの減少やコスト的な面を考えても、和のスタイルが復活するのは難しいでしょうね。むしろ、今以上に機能性を重視した住宅が増えていくと思います。

安田

やっぱりそうですか…。耐震性や断熱性など、機能面を優先した家が多いですもんね。個人的にはちょっと寂しい気もしますが。

中島

そうですねぇ。ただ一方で、お金をかけておしゃれな家を建てる人も増えている印象なんです。そういう意味では、家造りに対するニーズが二極化してきているのかもしれませんね。

 

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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