「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。
第103回 商品の魅力がなければ、作り出せばいい?

前回は「商品がある会社」についてお話しましたけど、せっかくいい商品があるのにマーケティングが下手な会社もあるじゃないですか。

はい。マーケティングが苦手なんやったら、誰かに頼ればいいんです。でも「勝負するもの=いい商品」がないと限界があるだろうなと。マーケティングで新規顧客の集客はある程度できるかもしれないけど、リピーターは獲得できないんじゃないですかね。

ふむふむ。ちなみに中辻さんの会社に、商品力がイマイチな商品の販促依頼が来ることもあると思うんですが、そういう時ってどういう対応をされるんですか?

ありますね。ちょうど先日、自動車関係の企業様から「車検のご案内」でチラシを打ちたいというご依頼を受けたんです。ただ私は車好きなので、第一印象としては「車検って、普通は車を買ったお店で受けるものでは?」って思ってしまったんですよね。

そうですそうです。それで「じゃあ御社で車検を受けるメリットって何ですか?」って聞いたら「地元密着企業だから、お客様に安心してもらえる」って。安田さん、これを聞いてどう思われます?他社からわざわざ店を変えてまで、そこのお店で車検受けようかなって思えます?

私も全く同じ感想で。確かに安心は大切ですけどチラシに書くにはもっと具体的な強みが必要でした。だから「私だったら、仕事が忙しい時に自宅や会社まで車を引き取りに来てくれて、しかも代車まで置いていってくれたら、頼んでもいいかなって思うかもしれないですね」って伝えてみたんですよ。

笑。そうしたらお客様もその気になってきて、いろんなアイディアを出してくれて。「車検用の専用レーンがあるので最短即日で車を返却できます、というのはどうです?」みたいに、積極的な意見交換をしていけたんですね。私もワクワクしてきて「地元の車検、全部奪い取るつもりでチラシ作らせていただきます!」と宣言したりして(笑)。

もちろんいろんなケースがありますが、何も知らない消費者に対して、その商品の魅力をプレゼンしたりアプローチするという視点が欠けていることが多いですね。前提として「この商品を知らない人の気持ち」になれていないというか。

ああ、採用も似たようなものですよね。本来であれば求職者目線で書かないといけないのに、9割以上の企業は「会社目線」で求人文を書いてしまう。そう考えると中辻さんは「求職者」や「消費者」の視点をしっかり持てているからこそ、反響が出せるんでしょうね。

…ところで先ほどの自動車会社の商品開発も、安値でやってあげちゃったんですか? 以前の求人のように。
対談している二人
中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役
1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。