第89回 中小企業に必要な「他とは違うベネフィット」

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第89回 中小企業に必要な「他とは違うベネフィット」

安田

少し前、倉橋さんがXで「転職する人は絶対に給料が高い会社へ」と言っていたのを見かけて気になっていたんです。私みたいにいつも好き勝手言ってる人間ならまだしも、倉橋さんがそこまで断言しちゃって大丈夫なんだろうかと(笑)。


倉橋

ああ、そうですか。普段から言ってることなので、そんなに意識してなかったですね。

安田

言ってること自体は正論だと思うんです。実際、わざわざ給与が下がる企業に転職する人はあまり多くないでしょうし。でも自社の給与が低いことを気にしている経営者さんが見たら、ちょっと反感を買っちゃうこともあるのかなと。


倉橋

うーん、もしかしたら人によっては嫌な気持ちになるかもしれませんが、そこはあまり気にしてないですね。それよりもウチに優秀な人材が来てくれることの方がずっと重要なので。ちなみに「世襲制にしない」と以前から公言しているのも同じ理由です。

安田

なるほど。ともあれ実際は、社員より同業者の目を気にしている経営者の方が多い印象なんですよ。なんというか「経営者の仲間内で浮かないよう、皆と足並みを揃えないと」って考えていそうというか。


倉橋

うーん、そうなんですかね。僕は全く気にならないなぁ(笑)。もちろんあえて波風を立てる必要はないと思いますけど、そこを気にして独自性を失っちゃう方がマズイ気がします。今後の中小企業は、何か一つでも他と違うベネフィットがないと生き残っていけないと思うので。

安田

仰る通りだと思うんですけどね。経営者の知り合いから「またあんなこと言って」と嫌味を言われたりしないのかなと。


倉橋

まぁ少なくとも直接言われることはないですね。あ、でも「世襲制にしない」と言い出した時はちょっとザワザワしたかな(笑)。

安田

ああ、なるほど。中小企業では世襲制のところが少なくないと思いますし、「そこを否定されちゃ…」という気になったのかもしれませんね。でもそもそも世襲にすると税金も優遇されるんじゃなかったでしたっけ。


倉橋

ええ。「身内が継ぐと税金が安くなる」という法律がありますから。だからこそ皆さん世襲をしようとされるんでしょうけど、「お前も世襲にしなよ」ということは言われないなぁ(笑)

安田

きっと「こいつはもう違う人種なんだ」と思われてるんでしょう(笑)。


倉橋

そうかもしれません(笑)。裏を返せば、そういう考えの人間だということを知っておいてもらえるのもXのいいところですよね。転職を考えている人が万代に興味を持ってくれるキッカケにもなるし。

安田

確かに確かに。興味のある会社なら、社長の発信は絶対に見ますからね。


倉橋

そうなんですよ。だから独自の強みがあるなら、躊躇なく発信した方がいいと思います。

安田

なるほどなぁ。でも万代さんは今東北や北海道を中心に店舗展開されてますよね。地方の方がご近所づきあいが大事というか、暗黙の了解みたいな空気がありそうな気がするんですけど。

倉橋

どうなんでしょう。特に地元の団体からお声がかかることもないので、あまり気にしたことがなかったです。

安田

へぇ、そうなんですね。でも日本人って、さっきの話のように「地域や同業の中で浮かないように」と考える人が多いじゃないですか。はっきり自分の意見を言える人って少ないですよ。

倉橋

もちろん僕も、なんでもかんでもズバズバ言うわけじゃないですよ。ただ経営者としては、その方が効果があると思うから発信しているだけで。

安田

そうか。優秀な人材に集まってもらうために割り切ってるということですね。あえてケンカを売っているわけではないと(笑)。

倉橋

そりゃそうです(笑)。僕はめちゃくちゃ平和主義ですし、あくまで経営者としての判断です。

安田

なるほどなぁ。確かに地域や同業の社長の目ばかり気にしてたら、やりたいこともできなくなっちゃいますもんね。

倉橋

もちろんお付き合いはきちんとしないといけませんけどね。でもそれとは別に自社のセールスポイントはしっかり伝えていかないといけない。特に今はダイレクトに採用できる時代なので。

安田

確かにそうですね。ちなみに世襲を続ける会社や給料を上げられない会社ってまだまだ多いですけど、そういうところには人材が来なくなると思いますか?

倉橋

そうですね。これからその会社で働く人にとっては、世襲も低い給料もデメリットでしかないので。

安田

確かに。同じ仕事なら給料が高いに越したことはないし、世襲じゃない方が「次は自分が経営者になるぞ」という熱意ある人材が採れそうです。それにしても、なんで皆ここまで世襲にこだわるんですかね? さっき出た税の優遇って部分はあるにせよ。

倉橋

まあ、自分にも子どもがいるので、親の気持ちとしてはわからなくもないんです。でも世襲しても喜ぶのは身内だけじゃないですか。ビジネスって本来は「誰かに喜んでもらうこと」で対価を得る活動なのに、こんなに喜ばない人が多いことをなぜあえて選ぶんだろうと不思議に思います。

安田

そうですよね。事業は社員に残して、家族にはお金を残せばいいと思うんですけどね。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

Twitter  Facebook

株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから