第101回 採用難を突破する「付加価値創造スキル」

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第101回 採用難を突破する「付加価値創造スキル」

安田

採用がどんどん厳しくなってますよね。特に中小企業の場合、これまでと同じやり方じゃ通用しなくなってきている。


渡邉

確かにそうですね。考え方を根本から見直さないといけないタイミングに来ている気がします。にもかかわらず、経営者の意識がまったくアップデートされてないというか。「今までもなんとかなってたし、これからも大丈夫でしょ」みたいな。

安田

そうそう。やけに皆さん楽観モードですよね。危機感が薄いというか、今の現実とはだいぶズレている気がします。


渡邉

そうなんですよ。今さら「外国人採用にチャレンジしてみようか」という会社もあったり。

安田

うーん、それはかなり遅れてる感じがしますね。東南アジアで日本に人材を派遣する仕事をしてる人に聞いても、円安の影響もあって海外の人はもう日本に行きたがらないらしいですよ。


渡邉

日本で働く動機がなくなってしまったんでしょうね。ちなみに安田さんが考える、中小企業が「せめてここだけは変えないとまずいよな」という点ってどこですか?

安田

いっぱいありますけどね(笑)。まず社長がSNSをやってない会社は致命的でしょう。ホームページがないのと同じくらい、いや、それ以上に大きな問題かもしれません。


渡邉

なるほど。確かに今の人って、社長がどんな人かを見てから応募を決めますからね。

安田

そうそう。仕事内容や待遇だけじゃ選ばれない。「自分に合う仕事」を選びたいという人は間違いなくチェックしてるでしょうね。


渡邉

本当にそうですよね。大企業は別として、中小企業は「社長との相性」がすべてといってもいいかもしれない。

安田

そう思います。それに、昔ながらの「人を使って売上を伸ばす」って発想も、もうそろそろ限界ですよね。これからの社長って、いわゆる管理職じゃなくて、自分で新しい価値をつくっていく「クリエイティブ職」だと思うんです。

渡邉

ああ、なるほど。人をマネジメントするというより、自分が一番前で動いて価値を出すって感じですね。

安田

そうそう。会社を引っぱっていくのって、社員でも仕組みでもなくて、やっぱり社長の発想力と行動力なんですよ。そのうえで、社員にも「働いてもらってる」という感覚を持てるかどうか。お客さんと同じようにリスペクトできるかが重要です。


渡邉

同感です。それができていれば、社員も楽しく働けるし、自然と力を発揮してくれるわけで。結果的に、生活も安定して豊かになってくるんですよね。

安田

そうなんですよ。社員の幸せと会社の利益。そのどちらかじゃなくて、ちゃんと両方を実現するのが社長の仕事じゃないかと。ただそれを本気でやろうとすると、ビジネスモデルを見直すくらいの覚悟が必要になるとは思いますけど。


渡邉

確かに。よくある「SNSを始めました」みたいな話じゃ、とてもじゃないけど追いつかないですよね。会社のあり方そのものを、根っこから組み直さないといけない。

安田

仰るとおりです。社長自身がまず、誰よりも価値を生み出す存在にならないといけない。


渡邉

付加価値を生み出せる経営者って、どれくらいいるんでしょうね。そもそも「付加価値」がどういうものかも、わかってるようで実はわかってないという人が多いような……

安田

割合でいうと、付加価値を本質的に理解して実践できている経営者は2割もいないかもしれないですね。多くの中小企業は「商品を仕入れて売る」「人を雇って人件費以上の利益を出してもらう」というビジネスモデルですから。


渡邉

そもそも「人を使って利益を出す」っていう発想自体、もう時代に合わなくなってきてる感じはありますね。

安田

そうなんです。どんどん人が足りなくなっていく時代に、そういう「人をコストとして捉える」やり方はもう限界なんですよ。これからはその人材にどんな価値を加えていけるか。そこを考えられないと、いずれ立ち行かなくなってしまう。

渡邉

確かに。とはいえ省人化を突き詰めても大企業には勝てないというジレンマがありますよね。省人化や自動化は、大企業が最も得意とするところなわけで。

安田

そうなんですよ。だからこそ、中小企業はアナログな部分を残しておかなきゃいけない。そのうえで、仕入れた人材や商品に価値を乗せて売る工夫が必要なんです。

渡邉

つまり「価値を足す」のが社長の仕事とも言えると。例えば社員の特性や強みを見極めて、それが商品やサービスに反映されるような仕組みをつくることも「価値を加える」ことの一つですよね。働く側からしても、「自分の特性を活かせる」と思えれば長続きするでしょうし。

安田

だからこそ「付加価値創造スキル」がないともう厳しいでしょう。他社とも差別化できないし、価格競争に巻き込まれて終わってしまう。

渡邉

まさに住宅業界でもそういう会社が増えてます。要は「そこそこのクオリティとそこそこの値段で頑張ってます」が多いんですよね。それではどこも似たり寄ったりで、いずれ淘汰されていってしまう。となると「縮小」の方向に進まざるを得ないんじゃないかと。

安田

なるほど。とはいえただ縮小するだけではダメでしょうね。付加価値を上げるための縮小でないと。単に小さくなっても、先細るだけなので。

渡邉

確かに。そのためにも生産性と単価の両方を上げていかないといけない。

安田

そうそう。それに無駄な人材構成も見直す必要があると思います。総務課長、人事課長、経理部長のような「どの会社にもいる肩書き」の人材は全部アウトソーシングでいい。その代わり自社にしかない役割の人はしっかり確保する。

渡邉

ははぁ、なるほど。面白い発想ですね。…でも中小企業の社長って、「付加価値をつける」ことが苦手な人が極端に多いですよね。

安田

ターゲットの絞り込みができてないんでしょう。まずは「損得勘定」から抜け出すことがポイントなんです。例えば100円が10円より高いとか、1000円より安いというのは、誰が見ても同じですよね。でも「どっちが楽しいか」は人によって違うわけで。

渡邉

なるほどなるほど。その「楽しさ」の方に向かっていかないといけないと。そういえばこの前、家族でUSJに行ったんですけど、すごく高いのにかなりの人だかりで。食事だけでも1万円を平気で超えてくる。

安田

そこがまさに「付加価値」ですよね。それだけ高くても「行きたい」と思わせる力があるわけで。ディズニーランドなんかも単価を上げた結果、過去最高収益ですから。学ぶ点は多いと思います。

 


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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