第102回 AIを育てる「問いの力」とは

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第102回 AIを育てる「問いの力」とは

安田

最近、「AIが経営に与える影響」ってすごく大きくなってきたと思うんですよ。経営者の役割も、AIによってどんどん変わっていく気がしていて。


渡邉

確かに。AIがどんどん判断材料を出してくれるようになってきて、何ならAIで完結できてしまうことも多い。だからこそ「じゃあ人間は何をするのか」って観点はすごく重要になってきますよね。

安田

そうなんですよね。…とはいえAIの情報をそのまま鵜呑みにするのは危険ですけど。


渡邉

今はまだ精度に限界がありますからね。でも近いうちに「この選択肢なら成功確率90%です」とか出してくれそうな気がします。

安田

でもそれを全員が選ぶようになったら、むしろ失敗の確率が上がるんじゃないですかね。結局、一番乗りした人が得をするという構図は変わらないんじゃないでしょうか。将棋のAI同士の対局なんか見てると、同じ性能なら最終的には先手が勝つって言われてますしね。


渡邉

なるほど、つまり「先に動いた人が勝つ」ってことですね。

安田

そうそう。理論上はミスをしなければ先手が勝つんです。どれだけ頑張ったとしても、それが先人の真似だったらなかなか成功はできないわけです。


渡邉

確かに確かに。要するにAIが「これが正解です」って出す前に動いてる人が強いんでしょうね。AIに聞く時点で、もう一歩遅れているのかもしれない。

安田

そう思いますよ。もちろんAI活用は今後も広がっていくでしょうが、結局AIはAIで人間ではない。そういう意味でも、AIにすべてを任せた経営は非現実的なんじゃないかと思ってます。


渡邉

わかります。そもそもAIって、こちらが何らかのアクションをしなければ動きませんからね。つまり「課題をどう設定するか」がめちゃくちゃ大事になる。それでいうと最近は、「学習する組織」はやっぱり強いなと思うんです。

安田

そうでしょうね。そして、そういう組織ほどAIの使い方もどんどんうまくなる。AIもあれこれ学習して成長していくといいますし、「AIをどう育てていくか」というのは今後の企業の重点課題かもしれない。

渡邉

ああ、確かにAIをうまく育てていける人が社内にいれば、極小数の社員でも回せるようになりそうですもんね。逆に学習しない組織や経営者は、時代に取り残されていく。

安田

そうなるでしょうね。もっとも、AIはあくまでツールであって、マーケットにいるのは結局「人間」ですからねぇ。良かれ悪しかれ人間は機械とは違うわけで。


渡邉

わかります。経営者って「人間を相手にしている」ことを忘れちゃいけないんですよね。でも安田さん、AIが常にそばにいる生活が当たり前になったら、その人間自体も変わっていくんじゃないですか? 「上司の役割」とか「マネージャーの仕事」も今まで通りじゃダメというか。

安田

もちろん影響はあるでしょうね。指示を出して進捗を管理して……っていう従来のやり方は必要なくなっていく気がします。それよりも上司の仕事は「困ったらこの人に聞けばいい」って専門家に繋げたり、環境を整える役割にシフトしていくんじゃないかな。


渡邉

なるほどなぁ。そう考えると、マネジメントって「快適な場をつくる仕事」になっていくのかもしれませんね。

安田

なるほど。困ってそうな人に声をかけたり、雑談の中でヒントを拾ったり…要はAIにはできない部分を担う役割ってことですよね。


渡邉

そうそう。『課長 島耕作』みたいな上司像とは、まったく別物ですね(笑)。

安田

笑。時代の変化が早すぎて、5年前のやり方すらもう通用しなくなってますからね。むしろ200年前の哲学の方が今に活きるのかもしれない(笑)。


渡邉

AIがどんどん発達していくからこそ、逆に人間の直感というか、感覚が大事になってくるのかも。

安田

それこそAIには難しい部分ですよね。「違和感を覚える」というような感覚は、やっぱり人間特有のものだと思います。例えば「なぜ人は髪にパーマをかけるのか」っていうのも、AIにはきっとよくわからないですよ(笑)。

渡邉

確かに確かに(笑)。理屈だけじゃ測れないからこそ人間って面白いんでしょうね。

安田

そうそう。計算できる部分はAIがやればいいんです。でも計算できない部分というか、予測できない「おバカな行動」を担うのが人間なんだと思います。

 


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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