第70回 「守られる国」から「守りたくなる国」へ

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第70回 「守られる国」から「守りたくなる国」へ

安田

最近、トランプ大統領の発言や動きが世界をカオスにしているように見えますよね。でも私、実はトランプさんのような人が登場するのをどこかで期待していたタイプなんです。何もしないまま終わるより、混乱させてでも前に進める人のほうがまだいいかなと。


藤原

それは私も同感です。破壊から生まれる次のステージを期待するっていうことですよね。

安田

そうそう。実際、トランプさんの「アメリカファースト」以降、国際秩序が大きく揺らいだじゃないですか。日本との安保条約も例外じゃなくて、アジアでもし何かあったら日本が最前線になるなんて話も出ている。


藤原

アメリカの武器を買い続けろとも言われてますしね。

安田

ええ。そのせいか、ネット上では「日本も核武装すべきだ」って意見がやたらと目につくようになってきて。でも現実にはアメリカがそんなことを許すわけがない。核開発を始めた時点で、下手すれば基地から軍が出てきて制圧されるかもしれないわけで。


藤原

今の日米関係では到底無理でしょうね。首都の上空すら自由に飛べないような国ですから。

安田

そうなんですよ。そんな状況で核武装なんて、本気で信じてる人がいるのが不思議なくらいで。


藤原

ええ。もし国民投票で8割が核武装に賛成しても、今の日米関係が続く限り、絶対に無理だと思います。

安田

とはいえ、安保条約が本当に破棄されて「自分の国は自分で守ってね」と言われても、実際そんなの無理じゃないですか。周辺国も黙ってないでしょうし。


藤原

そもそも今の日本の防衛力では、中国や北朝鮮に本格的に攻め込まれたら持ちこたえられないですからね。アメリカがいなければ、沖縄や北海道なんてすぐに取られてしまうかもしれない。

安田

そうそう。だから現実的に、日本はアメリカの庇護下にいるしかない。でもそれだけに頼っているのも限界がある。そうなると、もう一つの道としては「外交で国を守る」という考え方になるんじゃないかと。


藤原

そうですね。中国やロシアともうまく付き合って、さらに多くの国にギブしまくって、「日本は守る価値がある」「日本にいいことをすると得をする」と思われる国になる。つまり「ギブしまくる外交」というか。

安田

まさにまさに。とはいえ実際は、防衛の議論をするだけで怒り出す人もいるのが現状で。政治家は人気商売だから、そういう人に気を遣って話せない部分もあるんだろうなと。


藤原

そうですねぇ。そうはいっても、そろそろ真面目に国防を考えないといけない時期に来てますよね。今のように大国に囲まれている以上、自力防衛には限界がありますから。

安田

そうなんです。そういう意味では、この状況で国防にお金をかけるのはむしろ悪手だとも思えるんですよ。むしろ敵を増やすリスクのほうが高いような…


藤原

そう考えると、やっぱり外交と経済支援で、「お得だから守る」という構図を作るしかないんでしょうね。そのためにも、国としての立ち位置をはっきりさせて、「損得」の軸で国際関係をデザインしていくべきだと思います。

安田

企業だってそうですもんね。相手にとって得な提携をすれば大事にされるし、裏切られにくくなる。アメリカのように自国の利益を最優先に考える国が増えている今こそ、信頼される国になることが最大の防衛だと思いますよ。


藤原

ええ、本当に。その方向で戦略を考えた方がいい気がしますよね。他国の平和や豊かさに貢献するような。

安田

そうそう。例えば「GDPの3割を途上国の支援に使います!」と宣言しちゃうとかね。


藤原

いいですねぇ。そういう戦略があれば、「海外のために税金を使うのもアリだよね」という風潮になっていくでしょうから。あとはそれに加えて、「日本に手を出したらやばい」と思わせる抑止力も必要ですよね。抑止力と信頼、この両輪があって初めて国防が成り立つ。

安田

仰るとおりですね。それを考えても、今の自衛隊に任せっきりの状況は無理がある。もっとも、本気で武装するなら、莫大な予算と国民全体の覚悟が必要になりますけどね。


藤原

北朝鮮のような徴兵制を敷く覚悟があるかというと、現実にはないですからね。結局、アメリカの軍事力に頼らざるを得ない。

安田

それを「一本足」ではなく、三本足、四本足くらいに広げて、多面的な安全保障体制を作るべきだということでしょうね。


藤原

そうそう。それを急ぎ進めるのが政治家の務めなんだと思いますけどね。

安田

確かに。そのためにも田中角栄がやったような「アメリカ一辺倒ではないバランス外交」が必要ですよね。


藤原

「アメリカ=味方、中国=敵」みたいな単純な話じゃないですからね。それこそ1回の対談では語り尽くせないですよ(笑)。

安田

本当ですね(笑)。でもこうやって立ち止まって考える機会を持つこと自体が、今の時代には大事なのかもしれません。


藤原

ええ。正解がないからこそ、考え続けるしかないんでしょうね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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